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 どうしてこうなった。
 目の前の山賊達――否、騎士団の面々を見ながら思う。

 ここは深い森の中。そこで、ひたすら魔物狩りをしていた。これが、私達エノク第二遠征部隊の任務なのである。

「ようし、今ので何体殺った?」

 隊長はベルリー副隊長に問いかける。

「ルードティンク隊長が二十体、私が七体、ガルが十一、ウルガスが五」
「この調子でいけば、明日には終わるな。おい、野ウサギ、数を記録しておけ」

 髭面で強面な大男が私に命じる。
 あのお方は山賊のお頭……ではなくて、エノク第二遠征部隊の隊長である。
 はあと盛大な溜息を吐きながら、魔物討伐数のノートに数を書き込んで行った。

「野ウサギ、えらいダレてんな」
「野ウサギではなく、メルです。家名はリスリス」
「野ウサギだろうが」

 そう言って、ルードティンク隊長は私の長い耳を指先で弾く。

「ギャア! 止めてください!」

 嫌がる私を見て、がははと笑う。
 この変態山賊が、何しやがる! と叫びそうになるのを、必死で堪える。一応、相手は上司なので。
 それにしても、無神経な男だと思う。フォレ・エルフの特徴である、長く尖った耳は神経が集まっていると聞いたことがあった。
 これは、いたずらされるためにあるのではなく、森の中で暮らすために発達した器官になっている。獣や魔物の気配を察知し、遠くの鳴き声も聞き分けることができる。


嘘つき!なんだこの一人称は!