てかお題やってたんですね。ちょっと書いてみます。am1:26

ミスリル鋼の鎧に身をつつんだセイナルが剣を構え、目をあげると黄昏だった。
後ずさりをすると、同じく甲冑の女戦士ミルダと肩がぶつかる。
鱗雲という言葉がある。
上空に広がる鱗雲は、雲ではなく、輝く鱗の集合だった。時刻も陽が没して久しいはずだ。
「これが、竜?」「ああ。そうらしいな。夜を夕に変える魔物。伝説の通りだ」
ミルダにセイナルは頷きながら思う。
しかし何でこれが魔物なのだろう。星の暗黒を遮って輝く姿は、生物の範疇を越えて、大陸の
それだ。そしてどうしろというのだ。俺たちには剣しかない。
「ミルダ」「何よ」「この戦いに生き残ったら、結婚してくれないか?」「それ、今言うこと?」
「多分今しか言えない。悔いを残したくないんだ」
2人は視線を交わさない。予言よりも5000年早い竜の襲来に、そんなことをする余裕はないのだ。
竜の天敵、怒りの勇者の血脈は途絶えて久しい。
怒りの勇者は、太古の昔、竜を屠った。その業績をもって王国を打ち立てたが、100年前に
帝国に滅ぼされたのである。
そう、帝国からすれば、5100年後の竜などより、大陸に覇を唱える事のほうが重要だったのだ。
勇者の子孫をかくまう一族がいたとの噂もあったが、そんなものは100年の時に霧消してしまった。
そして今夜、竜が空を覆っている。

だが、空気は和らいだ。ミルダがくすっと笑ったからだ。
突如、鱗雲の向こうから、すすり泣きのような『音』が響いた。
鱗に波紋が広がる。と、構えた剣が塵と化した。
最硬度を誇るミスリル鋼にもひびが無数に走り、剣と同じく塵と化す。
セイナルはチュニックと下着だけという、情けないいでたちになってしまった。

この現象に、セイナルは古文書の文言を思い出した。
『鉄を塵に帰す咆哮。その声の前に、全ての金属は形を失う。』

続く文言は……。
『鱗の下降。それを仰ぐ全ての生き物は、命の形を失う』
「逃げよう! ミルダ! 洞穴を探すんだ! このままじゃ俺たちは食われる!」
叫んで、セイナルはミルダを見た。
彼の瞳孔は大きく開いた。相方の女戦士は、チュニックも下着も最新のものをそろえていた。
素材はミスリルの糸、つまり金属である。
それらは竜の咆哮により、鎧と共に塵になっていた。つまり、若き女戦士、ミルダは全裸であった。
「……見るなあああああああああああああああ!!!!!!」
羞恥と共にミルダは叫んだ。その豊満なる乳房、引き締まった腹部、どっしりと太い大腿部、そして
下腹部の繁みを、紅蓮のオーラが覆い走る。
それはプロミネンスのように巨大化し、セイナルは後方に吹き飛んだ。

これが、この後すぐに世界を救った怒りの勇者(末裔)ミルダの覚醒であった。