両手剣を履き黒装束に身を包んだ屈強な男、その名はラディ。
ローブの下に革の軽鎧を着込み、弓と矢の詰まった箙を背負い、更に術具を兼ねた細剣を腰に差した女がラディの隣を歩いている。彼女は魔法戦士のレナ。
二人は相方と組んでこのかた、互いの弱点を補う組として、傭兵として名を挙げつつあった。
そんな二人は、いつものごとく依頼を探して街から街への旅暮らし。
ようやっと森を抜けて、依頼者がいそうな次の都市まであと1日というところまできていた。
危険地帯の暗い森を抜けて、さしもの二人も気が緩んでいたのかもしれない。
巨大な黒い影が頭上スレスレまで迫っているのに、なぜか二人とも気づかなかった。

「おい、なんだこりゃ、お前、どうした!?」

「わかんないわよ! あたしたちの頭が沸いたんじゃなければ、急に湧いたとしか言えないわ!」

索敵も得意とする器用万能なレナがわからないとなれば、それはかなり深刻な事態である。
ラディはすぐさま剣を抜き放ち、レナは流石の早業で矢を弓につがえた。

落ち着いてみると影は長い首と尾に皮膜のある翼、早い話が典型的なドラゴンの姿をしていることがわかった。

「くそっ、こっちはたった二人なんだぞ!」

彼らは手練れではあるが、ドラゴンというのはもっと多人数で当たるものである。最低でも怪我を癒せる治癒師は必要だった。

それでも街の近くということもあり、二人せめて一矢報いようと死を覚悟した瞬間、ドラゴンが墜ちた。

「へ?」

一瞬惚けるも、流石の精鋭、慌てて避ける。

「おい、どうなっちゃったんだよこれ」

「見た限り死んでるけど……危ない!」

また頭上に黒い影。長い首と尾以下略。二体目のドラゴンが現れた。
しかし、全く同じように墜落していった。

そして三体目。またまた四体目。

三体目からは馬鹿馬鹿しくなって警戒を少し緩めたが、ドラゴンの雨はなかなか止まない。

「なあ、一体なんなんだろうな……」

「わかんないけど、これが収まるまで移動するわけにもいかないし……」

こんな会話の間にもドラゴンが降る。

結局小一時間ドラゴンは降り続け、後には大量のドラゴンの死骸と、どこか釈然としないままの二人が残った。

二人はドラゴンの雨が止んだ後ひたすらドラゴンの素材を剥ぎ取った。

近くの街でどうにかそれを売り払い、巨万の富を得た。

もちろんドラゴン素材は自分たちの武器防具にも加工した。

ドラゴンの血を浴び超人化したことに気づいた二人が無双して勇名を挙げるまで、後一ヶ月。