お題 『花見』『ツンデレ』『ハプニング』『アトラクション』『スカート』
【遊園地にて】
「きゃー!」
「ぎゃぁぁぁああ! 怖い、怖い、怖い!!!」
おや、久しぶりの遊園地に来てみたらジェットコースターの方から悲鳴が聞こえてきますね。他のアトラクションからは特にこれと言って変な声も聞こえませんか。
では私の仕事はあちらでしょうか?
おやおや、ジェットコースターは随分と人気なようですね。これは少し骨が折れるかもしれません。少しだけでも仕事を減らしてみましょうか?
おや、あそこにペアルックのカップルがいますね。なにやら後をつけている人も二名いる様子。あの方のカバンの中から見え隠れしているのはなんでしょうか?
あ、落ちましたね。……スカート? 何故そんなものが男性のカバンの中に……?
「あの、落ちましたよ……?」
「え? あっ!?」
「ちょっと、庄司! なんで、よりにもよってそれを落とすのよ!?」
「悪い、紗佳。……あれ? ちゃんと奥に突っ込んだ筈なのに……?」
何やら、背後の方で笑いを堪えている女性がいますね。この方の仕業でしょうか? まぁそれはどうでもいいでしょう。私には関係のないことです。
「お二方、今日はジェットコースターは避けた方が宜しいですよ?」
「……え?」
「……どういう事ですか?」
「若いお二人の事を考えての事ですよ。まぁ戯言として切り捨てて貰っても構いませんが。それでは」
言うことだけは言って立ち去ります。後は当人の問題ですからね。まぁ二人くらいなら、仕事には差し支えはありませんしね。
「変な事、言う人ね! 楽しみが減っちゃうじゃない!」
「……つってもなぁ。ジェットコースター、やめとくか?」
「ビビッてんの、庄司!? ……でもあんたがやめとこうって言うなら、私は……」
「紗佳……」
あーツンデレですか。そうですか。いちゃつき始めましたね、あのペアルックのカップル。隠れてる二人がなんだかガッツポーズをしているようですね。……まぁ関係ないのでいいでしょう。
まだ予定時刻には時間がありますね。せっかく桜が綺麗に咲いているので、時間潰しに花見と洒落込みましょうか。
さて、そろそろ仕事の時間ですね。ジェットコースターへと向かいましょう。
「ぎゃぁぁぁああ!? もうやめてくれ! 俺は誰も殺したくーーあっ……」
ガキン、ガッシャーン、ガラガラ
とても言葉では言い表せないほどの激音と共に、ジェットコースターが盛大にコースから外れ大惨事のハプニングが起こりました。死人は数名出ていますが、あのカップルはいないと言うことは、まだ死ぬ運命ではなかったということですね。
「……俺は、俺は何度も訴えたんだ、整備不良だって! 俺は安全である事に誇りを持ってたのに、なんでこんな事に……」
「ジェットコースターさん、気に病まないで下さい。これは運命で決まっている事なのです」
「……あなたは?」
「私は死神です。あなたと、この事故で亡くなった方の魂の迎えに来ましたよ」
「……そうなのか」
ジェットコースターさんも己の運命を受け入れたのか、すんなりと私の言葉に従ってくれました。さて、これで私の仕事も終わりです。
生者に助言をするというのも私としては珍しいハプニングですが、未来あふれる若者を見たらつい口が出てしまいましたんね。これからの人生に幸があらんことを。