使用お題:『花見』『ツンデレ』『ハプニング』『アトラクション』『スカート』

【僕のVRMMO事情】(1/3)


 アミューズメントパークの前に立って、僕は呆けて口をポカンと開けた。

 フロアぶち抜きの黒を基調としたその室内施設は色んな意味で僕の予想の埒外で、結局はゲームセンターの延長だろうしなんて言う僕の想像は、大きく裏切られた形だ。

「おい! 愛宕!!」

 同僚の磯橋の声で我に返る。僕の名前は愛宕 敬冶。アラサーのサラリーマン。僕達が男2人で、こんな室内アミューズメントパークに来たのは、ここにあるアトラクションに用が有ったから。

 体感型VRマシン。
 即ち、実際に体を動かすタイプのヴァーチャルリアリティーマシンをプレイする為だ。

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「え? マジで!? 丁度いいや、手伝えよ! イベント限定アイテムが欲しいんだよ!!」

 僕が自分と同じVRMMORPGをやっていると知った磯橋はそう言った。
 今行われている春コラボ「お花見会場であいまSHOW」のクリアボーナスの限定アイテムが欲しいんだとか。
 このイベント、ふざけた名前の割に結構難易度の高い討伐系クエストの為、戦闘が苦手なボッチプレイヤーの磯橋は、どうにかして手に入れられないかと考えていた所だったらしい。

「いやー。ネットオークションとかでデータを買えないものかって、本気で悩んだよ」
「やめれ、それ、違法だと思うから……」

 そんな訳で、会社から最も近いVRマシンの有るアミューズメントパークにやって来たのだ。
 一旦家に帰ってからログインだと、ちょっと翌日辛いからね。

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 専用台に上がり、モーションキャプチャー用のポインタを装着してヘッドセットを被る。いつもはコントローラーでキャラを動かしているから流石に違和感がある。

 僕は、自分のアバターのキャラクターIDを入力し、いつもプレイしている“ポンタ”ってキャラクターに成る。と言っても、リアルの自分に似せたキャラクターなんで、外見はそんなに変わらない。

「うわ、やっぱり勝手が違うなぁ」

 体を動かして、軽く技のモーションを発動して見てそう思う。
 いつもの家の据え置き機ならコントローラーでのコマンド入力に成る所が、体感型だとモーションコマンド……技に入る為の動きを実際に行う事で発動する訳だから、全く別のゲームと言っても過言じゃない。

「ちょっと練習しておかないとダメだなぁ、これ……」

 そう呟きながら、待ち合わせ場所であるイベント受付の会場まで足を運ぶ。隣でプレイしてるのにゲームの中では遠い場所にいる……なんか不思議な感覚。