使用したお題:『インターネット』『オカルト』『自己紹介』
【忍び寄る黒い悪魔】
夏季休暇が明けたあとの大学で、パソコンに詳しいという友人から『メリーからのメール』について聞かされていた。
それは今まさに僕が体験していることで、思わず飛び上がりたくなるほど驚いた。
最初のメールは何気ない挨拶文と自己紹介文が並び、僕との交流を持ちたいという内容だ。
翌日からはバイトから帰るたびにメールが届いており、内容は送り主の近況がしめていた。
初めのうちは興味半分で返信をしてみたが、もれなく宛先不明だと返ってくるだけだった。
誰かに相談しようにも、親しくパソコンに詳しい人間がそのへんにいるわけじゃない。
最初のメールから一週間ほどが経ってようやく相談できると思っていたけど、まさか向こうから話を振られるとは思わなかった。
僕の方からも症状を告げると、大仰な身振りをして現代のオカルトを体験できるなんてお前ついてるなと言われた。
ちょっと強い口調で咎めると、友人は涙目で笑いながら種明かしをしてくれた。
結局そのメールは、インターネットを介して感染したウィルスによるものだったらしい。
後日友人が家に来て、首を傾げながらもパソコンを綺麗にしてくれた。
それから気味の悪いメールが届くことなく一週間が過ぎて――――。
再びメールが届くようになっていた。
それも若干内容が不自然で、不定間隔に来ていた。
『メリーよ。いまゴミ捨て場にいるの』
『メリーよ。いま駅前の広場にいるの』
『メリーよ。いまタバコ屋さんの角にいるの』
『メリーよ。いま不細工な猫に追われているの』
『メリーよ。いまあなたの家の前にいるの』
僕は恐怖を感じながら玄関を覗いてみたが誰もいない。
恐る恐るチェーンロックを掛けて扉を開くが、すぐそこで隣の家の黒猫が寛いでいただけだった。
再びパソコンの前に座ってニコニコチューブを見ていると、再びメールが届いた。
『メリーよ。いま目の前にいるの』
見るとキーボードの陰から台所の黒い悪魔がでてきた。
〈おしまい〉