>>625 初挑戦です!

使用したお題:「その場しのぎ」「病気」

{嘘から出た魔王}(1/2)

「なんなんだここは……」

 ただそこら辺を散歩していたはずが、眩い光に目がくらんだと思えば、どこかの城の王宮の中央に僕は立っていた。

「おお!勇者よ、よくぞ召喚に応じられた」

 言葉からして、この貫禄ある初老の男性が僕を謎の力によって呼び出したことはすぐに理解できた。期待の目に当てられて、僕は間髪入 れず言葉を発した。

「そ、そうとも!僕こそが元の世界では容姿端麗、頭脳明晰、公明正大。勇者の中の勇者とは僕のことだ!」
「なんと心強い!この方ならばあの忌まわしき魔王を退治してくれるだろう!」

 またやってしまった、僕は緊張するとその場しのぎのウソをついてしまう、いわゆるそういう病気なのだ。

「この世界に召喚されすぐに悪いが、魔王城にいる魔王を討伐していただきたい。」
「ふむ、そうか。それで仲間は?」
「なにを言うか勇者殿、あなた一人決まっているではないか、地図とお金はもちろん渡そう。」
「そ、それもそうだな。足手まといは必要ないぞ!」

 追い出されるように城から出た。なにもスキルなんて持ってないのに……。

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 歩いていると、頭を覆える大きさのトカゲのような頭蓋骨が落ちていた。何もないよりはましだと思いそれをかぶった。と同時にとある 村につき、村人に話しかけられた。

「その骨はまさか、この近辺を縄張りにして悪さをしているドラゴニュートのものじゃないかじゃないか!」
「そ、そうとも!王宮からの命をうけて魔王を討伐しに来た勇者である!手始めにドラゴニュートを狩ってやったぞ」
「すごい!さすが勇者様だ!俺も旅について行きます!」
「かまわん、僕についてこい」

 勢いで仲間ができてしまった。もう逃げることすらできなくなってしまった。

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 ある町では、僕がお尋ね者とぶつかり罵声を浴びせられ縮こまる中、憲兵がその者に気づき捕獲した。あえて弱気になりその場にとどめ た、とその場しのぎを言うと。賛美の言葉を投げかけられ、またついてきたいという仲間が増えた。
 またある町では、路頭に迷っている少女を哀れに思いお金を渡すと、実は神の使いであり、僕はその場しのぎでこれは神の恵みだ、とい うと少女は感銘をうけて仲間に。
 さらにある独裁者が支配する町では、世の中に絶望している少年と会い、世界は広いんだ、意思があればいいのだ、と石を拾い空に投げ ると、独裁者の像にぶつかり倒れ、壊れた。その破壊が革命の狼煙となり独裁者は退治され、少年は希望を取り戻し仲間になった。

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その場しのぎでしのぎ続けるうちに数百人の大所帯になり、ついに魔王城についた。もはやこの人数だと魔物は襲ってこず、魔王の玉座ま で簡単に来れた。