とんでもない力を持った魔法使いがいた
彼は多くの弟子をとり、育て、やがてその中から傑物と呼ばれるほど強力な魔法使いが何人も現れた
しかし、それでもなお彼は魔法使いの頂点として君臨し続けた
私もかくいうそんな弟子の一人だ

そんな偉大な魔法使いが死んだというニュースが国内に流れたのは、ほんの2日前の事だった
魔法使いの家には多くの弟子や、政府の要人を始めとしたの著名人までもが葬儀のために集まった
式の最中、司会が進行を読み上げる姿をぼーっと眺めていると、お弟子らしき人の声が私の耳に届いた

「先生はすばらしいお人だったが、死ぬまであの癖だけはお直しにならなかったそうだな」
「収納魔法をトイレがわりに使うというアレか」
「病床にあっても、便利だろう、と笑っておられたそうだ」

ああ、懐かしいな
師に初めて教えをいただいたのも、確か収納魔法だったはずだ
あの頃はよく失敗をして、中身をぶちまけては叱られたものだ
そんな考えが頭をよぎったとき、ちょうど師の遺体がある壇上のあたりから、ピシリという亀裂音がかすかに聞こえてきた
そうそう、ちょうどこんなような音を立てて、収納魔法の中身が外に……