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ワイが文章をちょっと詳しく評価する【91】
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0001ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE 垢版2018/05/31(木) 10:51:37.67ID:e9HLf/lY
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ワイが文章をちょっと詳しく評価する【90】
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0266美世閲覧注意垢版2018/06/03(日) 16:27:05.40ID:TXyF3sUp
「でもおかげで超元気が出て今日はキテるってキャプテンに言われました、普段はダメ出ししかしない監督も今日はアドバイスしかしませんでした」
「さよか、役に立ったんなら本望や」
 美世は軽い陶酔感を覚えた、自分がこの豪腕投手の活力となる糧を提供している。自分がこのモンスターを育てている立場にあったとしたら、お前ならウチのもんになってくれるんか、と
 一瞬沸き起こった感情をどうしていいのかわからず、適当にいなそうとした美世に山田が言った。
「好きです」
「は? なんや突然藪から棒に、いまそんなんやったか?」
 明らかに動揺する美世に山田が更に上を行く動揺で顔を真っ赤にして答える。
「は、母の教えです、気持ちを伝えたい人には即座に伝えろって、その人がいつまでもお前の前に立っているとは限らないんだからって」
 美世は母と最後に交わした会話が軽い口論だった事を思い出した。謝るタイミングを計ってまごまごしている間に母は意識不明になりこの世を去ってしまった。
「僕は約束を守ります、貴女にふさわしい人間になってみせます
そしたら……あの、昨日の約束……僕の横に立って欲しいんです、そしたらいつでも伝えたい事を伝えられますから」
 美世は軽いめまいのようなものを感じたがかろうじてそれを振り払った。
「どこで借りてきたんやその台詞、10年早いわ、とりあえず全力で投げて来い、そしたら全力で食わしたる気張れ」
「はい!」
「ちょう待てぇ」
 きびすを返した山田を美世が呼び止める。
「はい?」
「お前……下の名前なんて言うんや」
「亮介です、諸葛亮の亮に一介の介ですが……なぜに?」
 山田が何かを期待するような顔をした。
「いや、ランチボックスに名前入れて自己主張しとかな危ないやろ、あんな飢えた獣の中に……」
「はい、お気遣いすいません」
「ええんや、行け」

 帰りの車の中で美世は上ずった声で独り言を言った。
「な、なんやあれ、男っちゅーのは背中で語るもんちゃうんか? 今日日の子ぉってあんなんか? 言わんでもわかるやろってなかなか言わんもんなんちゃうんかい、あんなんで野球でけるんかいな、女にうつつ抜かしてからに」
(でも、鳥谷も結婚した翌年にはバカスカ打ったしな)
 美世は助手席のランチボックスを見ながらさきほどのやりとりを思い出して赤面した。美世が信号待ちでぼーっとしていると後ろの車がけたたましくホーンを鳴らした。

 今日も美世は山田を迎えに行き、学校で降ろして弁当を手渡した。もう1週間ほどもこうした生活をしている。
「あの……美世さん今度家に来ませんか」
 美世が山田の顔を見てぽかんとした。
「あの、母が美世さんにお礼がしたいって」
「なんのお礼や」
「危ない所を助けてもらったり、お弁当作ってもらったりで」
「そんなん別にええのに、ウチが勝手に応援してるだけやねんから」
「実は美世さんのファンなんです、是非会いたいって」
「はぁ?なんで会うたこともない人が勝手に会員NO.1になってんねん」
「強盗です」
「ああ〜〜〜って涼介喋ったん、その辺の事いろいろと」
「はい、その人に助けられて今はお弁当作って応援に来てくれるって、それと、実は、母に白状させられまして、っていうかそもそも僕の話を聞いていてすぐにわかったらしんですが僕が美世さんの事好きだって……」
「はい? なんやそれ、ウチ品定めされるんか」
「そんなんじゃありません、母は元々オープンな性格なので、もちろん美世さんはただ野球が好きで僕の左腕が気に入ってるだけだって説明はしました、僕が勝手に好きなだけだって」
「まあ、そういう事ならええけど」
「金曜日の夕方とかどうですか?」
「ええで」

 山田の家はごく一般的な団地だった。しかし美世は幼い頃や中高校生の時に遊びに行った友達の家で、小さい部屋で身を寄せ会う暖かい家庭が羨ましかった。そんな気持ちを思い出して胸が踊った。
「母さん、連れてきたよ」
「お邪魔しますぅ」
 美世が挨拶すると玄関横の台所向かっていた山田の母親らしき人が反り返って顔を見せた。
「あらあらいらっしゃい」
 そう言いながら肩を揺らせて手を拭いているようだ。
「いつも息子がお世話になってます」
「こちらこそいつも楽しませてもろてます」
「小走りで美世の前まで来た山田の母はしげしげと美世の顔を見た」
「何か?」
「いいえ、あんまり美人さんなものでつい、失礼しました」
0267美世閲覧注意垢版2018/06/03(日) 16:40:28.26ID:TXyF3sUp
「こんな色もんがですか?」「いえいえ、かっこいいですよ」
「山田さんこそ隨分若くてこんな大きな子供さんがいるようには見えませんよ」「あらあら、お口も上手なんですね」
「ウチお世辞はよー言いません」

 2時間後。
「愛子さんそれは無い、ないわぁ「いやいや、ほんまやて」
「ほな賭けますか?」「ええでぇ、何掛ける?」
「か……掛布最多出塁記念メダルと岡崎が実際着てたユニフォーム……」「あいたたた言うてもた、これやってもたで、声震えてますやん」「ほな愛子さんは何掛けますねん」
「豪腕投手一人」
 愛子が山田の背中をバンと叩いた。 美世と山田が同時にギョっとしたが美世はすぐに切り返した。
「あ、あはははは、そら豪気でんなおっと愛子さんグラスが開いてまっっせ」「これはこれはおっとっとっと」
 胸を撫で下ろすような態度の山田が呆れて言った。
「母さん、おっさんになってるから注意して」「うるさいなぁ息子、賞品は黙って座っとき」
 妙に盛り上がる女二人の間で山田は半目になっていた。多少発音や数の数え方の節回しが変な所はあったが、ここまで完璧な関西のおばはんは初めて見た。
「しかし愛子さんあれやなぁ、今年も阪神あかんなぁ」
「何ゆうてんの、応援する事が大事であって勝ち負けはどうでもええねん」
「またほんな串かつ屋のおっさんみたいな事ゆうて」
「やかましな」
「はぁ〜掛布とバースと真弓と岡田帰ってけえへんかな〜、あの頃が一番よかったな〜」
「生まれてないやろ!」
 愛子が間髪入れずに美世の肩を手の甲ではたいた。
「いえいえ、ギリギリで間に合うてます〜」
「赤ちゃんやんか!」
「だっはははははは」
 二人は大笑いしたが山田は仏像のようになった。
「でも感慨深いわー、あの強盗退治の娘さんがウチにいるやなんて私大ファンになったんやで」
「ああ〜、それ聞きましたけどなんでですの、あの映像無くなってくれんかな、カメラに映ってる事忘れてやりすぎてもたし」
「いやいや、うちの息子に包丁向けようとした輩がひぃひぃ言わされてスカッとしたわ、ほんまクールな正義の味方やったで、それと特にグッと来たのは喉が乾いてる人が待ってるからはよしてくれっていうくだりですわ
緊急事態やのにそんなほんわかしててええんかいなと思いながら見てました、しまいには強盗をコテンパンにしたけどその後もはよ帰りたいって気持ちがなんというか、この人の家ってどんだけ暖かい場所なんやろうかと想像したんや」
 美世は逆に母子家庭ではあるが、つましいながらも愛子と亮介のように絵に書いたような家庭を羨ましく思っていた。美世は少し頬をひきつらせたが、すぐに柔らかく笑った。
「ええ、大事な家族が待ってたんです、ホッケ焼きながらウチの帰りを待ってたんです」

「なんかすいません、変な母で」
「いやいやなかなかおもろい人やった、好きになったで」
 愛子にお別れを言って外で代行を待つ間二人で話していた。
「なんちゅーんやろ、世間の垢にまみれてないっていうか屈託がないっていうか、とてもアンタを一人で育てたようには見えんで、オトンも失敗したなぁ、あんなええ人取り逃がして」
「いえ、父は……」
「ん?」
「父は僕がお腹にいるときに死にました」
「……あ、そ、そうか、そらすまん、うっかりいらん事ゆうてもた」
「いえ、いいんです」
「事故か」
「いえ、病気で」
「ほな愛子さんあんまり新婚生活してないんちゃうん」
「はい、入籍して1ヶ月後に亡くなりました」
 美世は眉間に皺を寄せて心を混然とした表情になった。
「ガンだったんです」
「一週間て、ほなもう病気の事はわかってたはずちゃうん」
「はい……」
 美世はしばらく絶句していたが恐る恐る聞いた。
「それでも結婚したん」
「はい、結婚生活と言えるような物は無いに等しかったけど、今でも父の事を語るときは本当に幸せそうな顔をするんです、母は僕を育てる為に再婚をする事もなく自分を捨ててしまいました
そのかわり父と過ごした時間を自分の中に永久保存したんです、あ、すいません、そんな事知ったこっちゃないですよね」
「いやそんな事ない、ええ話や、ちょっとグっと来たで」
 美世は自分の父親とその他の父親を比喩せずにはいられなかった。いまさら他人の家庭環境をうらやむ気持ちは無いが、父親らしい父親というは美世の一生を通したテーマに違いは無かった。美世の激しい期待の目に答えて、山田は笑うとさらに続けた。
0268美世閲覧注意垢版2018/06/03(日) 17:05:26.97ID:TXyF3sUp
「父と母は加古川で出会ったんです、会社の転勤で加古川にいた父は、骨折で入院した時に看護師の母と出会い付き合い始めました、2年間付き合って結婚の約束もしたんですが、父は電話をしても嫌いになったの一点張り
ついには電話にも出なくなって……僕を妊娠したのを知ったのもこの頃だそうです、どうしていいかわからず泣いて暮らしていた母ですがどうしても納得がいかず
父が消えてから1ヶ月後、父の実家を訪ねたんです、すると家族は困惑して母にすまなそうにしていたが、渋々病気で入院している事を打ち明けました
口が重かった家族から強引に病院を聞き出して訪ねて行った時には、無残にやせ細って髪の毛も無くなった父が力なく横たわっていたそうです、父は強かったと聞いてます、どんなに苦しい時でも太陽のように笑って、母はそこに惹かれたそうですが
父は母を悲しませる事だけは怖れたんです、父は母に、自分なんか忘れて別の人を探して幸せになれと言ったらしいのですが、母は聞かず、無責任にいなくなってしまうならせめて残りの人生を全てよこせ、と言って市役所から婚姻届をもらってきたそうです
母の籍を汚したくないと最後まで渋る父を説得して半ば強引に名前を書かせると、看護婦さんに立ち会ってもらって二人だけで式をあげたそうです
その1週間後に……山田は父の名字なんです、それがたった一つの遺産なんだそうです」
 山田はひとしきり話すと顔を上げて美世を見たがビクっとした。美世の目からは滔滔と涙があふれ出ていて、洪水レベルになっている。
「うっ、ううううう、なんでや……なんて残酷やねん……お神さんむちゃくちゃやんけ」
「あの、美世さん?」
 山田が美世の肩に手を置いてなんとかしようとしていると、団地の階段から降りてきた人が途中で足を止めた
 会えば挨拶する人だったが、見なかった事にしようとでもいう態度で足早に歩き去る人に山田は口をぱくぱくさせた。
「あの、美世さん泣かないで、すいません変な話して」
「変ちゃうわ、ただ悲しすぎんねん、
う……う……うあああああん」
 ついに声を上げて泣き始めた美世に山田は体を捻って回りをぐるぐると見回した。ふと上を見上げるとマンションのベランダからぽつりぽつりと人が顔を出している。向かいのマンションに反響して外の音がよく聞こえるのだがもちろん向かいからも人がベランダに出てきた。
「美世さん、お、お願い、泣かないで」
「愛子さんはほんまに愛で出来てるんやなぁ、うっうっ、別にうまいこと言うてるわけやないで、うっ、うっ」
「あの〜」
 突然聞こえた声に二人が振り返ると男が立っている
「坂田……ミヨさん……」
「ウチや」
 涙に濡れてグズグズの声で美世が答えた。
「あ〜どうも、ニコニコ運転代行サービスですが」
 マズイ所に来ちゃったという態度を隠さない代行屋に美世が言う。
「あの赤い車や」
「キーをお借りしていいですか」
 代行屋が腫れ物を触るように優しく美世の肩を支えて言うと、美世がバッグからキーを出した。
「涼介ほなこれでな、うっ、えぐっ、い、一週間で、結婚生活……おわた……うっ」
「あ、あの、美世さん大丈夫ですか」
「ウチは大丈夫や、亮介は、ふぐぅ、いっぱい食べて、風邪引かんように暖かくして……あ、愛子さんによろしくな」
「は……はい……」
 代行屋がチラチラと見下すような目で山田を見ながら美世を連れて行った。
「なんか俺が美世さんを結婚直後に捨てて愛子さんの所に行く感じになってる!」

「これ行っとくか」
「おお、でけえ!」
 美世と山田はデパートにいた。今日は祭日で一日みっちり練習をした山田は日暮れ前に練習を引けて美世と一緒に弁当箱を購入するためにやってきたのだ。
「しかし手癖の悪いやつがいたもんやなぁ」
「うーん、部員の中にはそんな事しそうなやついないんですけど」
「ほな外部の犯行か、まあべつにええけど今日一日飢えてもたな」
「はい、美世さんの料理を食べ損ねたのが悔しくて」
 山田が朝食を食べて練習に参加し、昼に部室に戻るとランチボックスが消えていたのだ。
「ほなこれを朝昼晩の6セット買うて、あとあの水筒小さいやろ?でっかいの買おうや」
「あ、僕出します」
「ええてええて」
「でも」
「なんもタダとは言わんがな、これは未来への投資や、将来涼介が有名になった時にウチが育てたと豪語するための投資やがな」
「ぷっ」
 山田が吹き出した。
ええやろ?
「はい、もちろん、公式プロフィールにもそれ載せます」
「よっしゃ、契約成立やな」
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