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ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【92】
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0001ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2018/06/09(土) 12:55:41.13ID:Yg37KSzP
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点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

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前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する【91】
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0239この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/10(日) 18:17:59.47ID:sAhtP0b4
「僕は諦めません、必ず美世さんの嘘を暴いてみせます、時間がかかっても必ずです」
 美世はロックを解除すると慌てて車に乗ってエンジンをかけ、シフトをドライブに入れて前を見たがそのまま硬直した。
 山田が言うように自分が間違ってるのだろうか。もう二度と合わない事以外に山田の未来を守る方法があるのだろうか。振り返ると山田が強く、真剣な眼差しで美世を見ている
 否。切り離すしかない。希望的観測に身を任せて失敗したのだ。同じ轍は踏まない。それに胃に穴が開くような思いをしてまで山田を愚弄したのに、もう二度とあんな事を言う勇気は残っていなかった。振り切るなら今しかない。
 美世はめまいのようなものを感じながら再び前を見ると車を走らせた。そしてサイドミラーを畳んでルームミラーに一発パンチを入れるとひたすら前だけを見て駐車場を後にした。
「くそ、途中までうまい事いってたのに、なんで追いかけてくんねんアホゥ
弱い女やろうと思うても全然でけへんのに強い女やろうと思うたらなんで弱ぁなってまうんやろ」
 また涙が溢れてきた美世は車中で声を出して泣いた。ミラーを畳んで不自然に蛇行する美世は警察に止められた。泣きながらトランス状態で話にならない美世は
パトカーで話を聞くと連行されそうになり、逆ギレして警官に首苅り式腕ひしぎを掛けてしまったため、鷹山が迎えに来るまで留置された。

 ひたすらごめんとしか言わない美世に、迎えに来た鷹山は何も聞かなかった。腹は減ってないかと一言聞いただけだった。

「あー失敗した、どうせ逮捕されたんならカツ丼食わせてもらうんやった」
 美世がしゃかしゃかと卵を溶きながら言う。
「バカ逮捕じゃねぇよ、懲らしめられただけだこの不良娘が、それにカツ丼は自腹で食べるのが普通だ、警察が奢ってくれるのは病院食みたいなやつだ」
 翌朝目を覚ました美世は極めて普通だった。
「さすが経験者はちゃうな」
「うるせぇよ」
「車取りにいかなあかんなぁ、どないしょ……」
「こっち見んじゃねぇ、タクシーで行けよ」
「このおっさん容赦無いな、失恋した女相手に」
 鷹山はドキっとした。そんなフランクな感じで核心を話してくるとは思わなかった。唖然とする鷹山を見て心の動きを理解した美世がニコっと笑って言った。
「気ぃ使われるのも辛いねん」
「そ、そうか、でも泣きたくなったら言え、胸を貸してやるから、一回100円で」
「金取るんかいな、ほんならいらんわ、姉さんにお願いする、そのほうがやらかいしパフパフしてもらうわ」
「おっさんかお前は」
「フフフ」
 美世は満足そうに笑った。
「ウチはトモ兄がおる限り大丈夫や、昨日は死んでまうかとおもたけど警察に掴まってよかった、トモ兄が迎えに来てくれた時はお神さんが降臨したんかとおもたで」
「そんな上等なもんかよ」
「まあお神さんいうよりはお不動さんやな、焚き火に座って剣持っといたらええんちゃうか」
「頭おかしいやつだろそれ」
「お不動さんは顔は怖いけど誰よりも優しい心の持ち主なんやで、トモ兄そのものやんか」
 少し顔を赤くした鷹山が吐き捨てるように言った。
「飯食ったら、車取りにいくぞ」
「よっしゃこのおっさん単純や」
「それ口に出しちゃうの?」

 あれから1ヶ月ほど過ぎた。近ごろあまり出かけたがらなかった美世が今日は買い物について来いという。心境の変化でもあったのだろうか。鷹山はマンションに戻ると準備を終えて居間で待っていた。
「お待たせ」
「お、早かったな」
 鷹山は振り返って美世を見た。
「お前……」
「なんや」
「いやなんでもない」
 美世は頭をコーンローに編み上げてブレイズをふさふさと垂らしているスタイルに戻っていた。以前のように目がつり上がって勝ち気な表情に戻っている。
 美世は車のキーを鷹山に手渡して自分の車で行こうと申し出た、荷物がたくさん乗るからだそうだ。デパートへ向かう途中、車中で鷹山がボヤく。
「なんか嫌な予感が止まんねーんだけど」
「ベンチプレス120kgの見せ所やろ、覚醒してくれ」
「やだよ荷物持ちで覚醒すんのなんか
まあ、お前最近あんまり外出なかったからな、それにしてもなんで急に?」
「秋物が安くなったからに決まっとるやん、待ちに待ってたで」
「お前大金持ちの癖にそういうとこシビアだな」
「買い物は戦いや、少しでもええもんを安く手に入れる戦争なんや、店長引きずり出して値切るでぇ〜」
「恥ずかしいからやめてくれよ」
「何ゆうてんの、コスト削減もできんで商売人が務まるかいな」
「そりゃそうだけどよ」
0240この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/10(日) 18:54:00.39ID:sAhtP0b4
 美世は楽しそうにあーでもないこーでもないと服を手にとって体に当てると鷹山に感想を聞いた。正直この手のショッピングが得意では無い鷹山だったが、嫌な素振りも見せずに美世の買い物に一日付き添った。
 鷹山は思っていた、あの日から特に落ち込んだ様子を見せる事も無かった美世だったが、実際には出かける事もせずにひたすらパソコンに向かって仕事する事で気を紛らわしていたに違いない。
 ヘッドセットをした美世が弟達に怒鳴り散らしている事もよくあった。しかしあれから1ヶ月は有に経った。徐々に本当の意味で立ち直りかけてるのかもしれない。
 帰りの車は休日の渋滞にはまり、なかなか進まなかったが、ここで思いもよらぬ事態が起こった。ビルに設置されている巨大なディスプレイが運悪く山田の姿を映しだした。球を放つ瞬間の静止画像だ。
 美世が意識的にスポーツ関連のニュースは見ないようにしている事は知っていたが、鷹山は逃げようのないこの状況に対処する事を諦めた。しかし美世はあっけらかんと言った
「トモ兄もサインもろといた方がよかったんちゃうか、すっかり有名人やで」
「ああ、失敗したな」
 しかし山田の写真をバックに喋るアナウンサーの発した言葉に二人は仰天した。
「これにより、山田選手はいずれの球団からも指名を受ける資格を失いました」

 唖然とする二人だったが信号が青になって後ろからホーンを鳴らされた。鷹山は窓を全開に開けて音声をなんとか聞こうとしながら進んだが、隣を走るトラックのせいで音声はよく聞き取れない。
 やがて二人の乗った車は流れに押されてビルを通過した。鷹山は恐る恐る振り返って美世を見た。頭を抱え込んで震えている。ダメだ、案の定悪い方向に思考が傾いてる。
「おい美世、お前が気に病む事ないって、きっと何か事情があるんだよ」
 鷹山は慰めたが美世の耳には入っていないようだ。鷹山はテレビをつけるかどうか迷ったがこの様子ではできるはずもない。駐車場まで戻ってきた鷹山は立っているのがやっとの美世を抱き上げてマンションまで連れ帰った。
 美世は部屋に篭ってしまったが、鷹山は先ほどのニュースの真相を確かめるべく居間でチャンネルを回し続けた。

「おい美世大変だぞ!」
 鷹山が美世の部屋をドンドンと叩いたが返事がない。
「開けるぞ」
 鷹山が部屋を開けるとベッドにつっぷしてぐったりしている美世は動かない。
「ほっといてくれへんか」
「いいから来いって」
 鷹山は半ば強引に美世の腕を掴むと引きずるようにリビングに連れて来て
テレビの前のソファーに座らせた。
「見ろ」
「テレビには山田がインタビュー攻めにあっている映像が流れていた。
「山田選手のような有望な人材を失うのは日本プロ野球界にとって
痛い損失になると思うのですがそのあたりはどう考えてるんでしょうか」
 美世はイヤイヤとかぶりを振ってテレビから目を反らした。
「いいから見てろって」
 鷹山が促す。
「はい、僕は日本のプロ野球を見て育ちました、そして僕を育ててくれた球界の皆さんには本当に感謝しています
ずっと入団にあこがれていた球団もあってそういった場所でプレーしたかったです」
「それではなぜいきなりアメリカンリーグに?」
「アメリカ?!」
 ぐったりとしながらテレビを見ていた美世がピンと跳ね上がって素っ頓狂な声をあげた。
「山田君、プロ志望届けを出さなかったんだ、メジャーを目指す気なんだよ」
 山田が記者の質問に答える。
「力を手に入れたいんです」
「どういう意味でしょうか?」
「僕は野球が出来ますがただそれだけです、僕は勘違いしていました、甲子園で優勝すれば何かが変わると思っていました
でも実際は大事なものさえも何一つ守れない無力な子供である事に変わりは無いんです、僕はお金が欲しい、一刻も早くお金を稼いで失った物を取り戻したいんです」
「日本でもお金は稼げるのではないですか?」
「全然足りないんです、日本のプレイヤーの年俸は多くても6億に届きません、最低でも10億は欲しいんです」
 会場がざわついてフラッシュがパチパチと光った。
「僕は尊敬されたい、畏敬を持って扱われたい、相手が誰であれ肩を並べて立っていたいんです」
「けっこういいますね」
「別にえらそうにふんぞり返りたいんじゃないんです、子供な自分が嫌いなんです」
0241この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/10(日) 18:56:30.76ID:sAhtP0b4
「でもそれなら日本で有名になってから段階を踏むのが順当なのでは?」
「時間が無いんです、いつタイムリミットになってもおかしくないんです
今にも手の届かなくなってしまう存在が、僕が大人であれば、誰にも負けない経済力があれば、泣かせたり、嘘をつかせなくて済んだ人がいるんです」
 熱く我を忘れて語っていた山田は急にあっという顔をした。
「すいません、ここカットでお願いします」
 両手でチョキをしている。
「あの、これ生ですが」
「あっそうなんですか」
 興味深い山田のコメントに一人の記者が食いついた。
「その人というのは噂の年上の彼女の事ですか」
 記者の口から飛び出した言葉に山田は仰天したが、他の記者も仰天してその記者の方を向いた。しかしすぐに山田に向き直って言葉を浴びせる。
「どういう事ですか?付き合ってる人の為なんですか?」
 山田の横にいた怪しげな髭面の男が山田の肩をトントンと叩いて耳打ちすると。耳を傾けてそれを聞いた山田がマイクに戻った。
「ノーコメントです」
 アメリカン・リーグのチームから派遣された現地エージェントのようだ。
 そんな様子を唖然として見ていた美世に鷹山がニヤニヤしながら言った
「山田君、1000万ドルプレイヤーになってお前を迎えに来る気なんじゃねーの?」
 美世は顎をかくかくさせながら鷹山を見た。
「お……お……欧米か!」
「それ今言うのかよ、もっと他に言う事あるだろ」
 美世は鷹山の方を向いて固まったままポロポロと涙を流した。
「お前、付き合う人間の条件は年収10億以上とか言ったんだろ、酷い女だな」
「そこまで言うてないわ!5億ってゆーたんや!」
「やっぱり言ったのかよ、しかし隨分手加減してやったもんだな」
 鷹山はバカ受けした。
「でも山田くん、お前につりあうには10億は必要だと思ったんだろうな
どんだけお前が好きなんだよ、男にあんな台詞を吐かせる女ってそうそういねーぞ」
「ほ、ほんなんわからんやん、お金は誰でも欲しいやろ、単にそれだけやん」
「あれだけ具体的に必要だからって言っておいてか? あんな子供が10億からの買い物ってなんだよ、お前以外に何がある」
 鷹山の指摘に美世は言葉を失った。
「すげぇ買い物だな」
 美世はフラフラと立ち上がるとテレビの前まで歩いて行き、ぺたんと座った。画面の中で険しい表情をしながらコメントする山田を指でまさぐりながらさめざめと泣いた。
「うっ、うっ、涼介……やっぱり遠い方がよう見えるわ」
 美世は立ち上がるとヒョイヒョイと跳ねながらソファーに戻ってきた。

 夕食を食べながら鷹山が言った。
「なぁ山田君が5年修行して一人前になったとしておまえいくつだ?」
「はあ? うるさいな計算すな、それにホンマにメジャーで有名になったら実際ウチなんか相手にされるわけないやろ」
「じゃあお前的にはどうなんだ?ある日成長した山田君が来日してお前の前に現れてだよ、付いて来いよベイベーって言ったらどうすんだよ」
 美世は複雑な顔をして考え込んだ。
「そ、そんなんその時になってみなわからん」
「お前の為に男になったぜマイスイートダーリンとか言うぞ多分」
「いやアメリカで何があってん、ビバリーヒルズに家でも買うたんか、アホちゃうん」
 鷹山はずっとニヤニヤとしている。
「お前からかうのおもしれー」


 その後、カリフォルニア州に本拠を置くチームのルーキーリーグに入った山田から度々メールが届いた。紙製の本物のエアメールだ。電話の方は着信を拒否されていたという事もあり、より確実な手段を選んだようだ。
 鷹山は横目で見守った。美世は時にニコニコとしながら、時に涙ぐんで手紙を読んでいた。あの山田の事だ、近況の他に愛の言葉をつづっているのだろう。

 その日、シングルAに昇格したという内容の手紙に添付されていた写真を嬉しそうに見せながら自分の事のように山田を自慢する美世に鷹山は言った。
「写メールか、逆に新しいな、それにしてもお前返事書いてないだろ? 書いてやったらどうなのよ」
 それまでの笑顔を急に曇らせた美世は鷹山から目を逸らした。
「凄いと思うよ?返事の来ない想い人に手紙を送り続ける精神力って、俺なら3回目でヘコむ」
 部屋の端っこを見つめながら何か思いを巡らせている美世に鷹山が追い討ちをかける。
「手堅い話でもいいから返事を書いてやればすげー力が湧いてくんじゃねーかな、たった一人、外国で戦い続けるのは辛いもんだ、心の支えになってやれば?」
 沈黙する美世に鷹山がとどめを刺しに行く。
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