薄灯りの下、私と彼女は正面から向き合っていた。
 この戦いはもう、どれくらい続いているのだろう。私は疲れ果てた体を再び奮い立たせるため、大きく息を吸った。
 床には、数人の少女が伏している。皆、私の大切な友人達だ。
 そして、そちらには目もくれず私だけををじっと見つめる彼女もまた……。

「鈴音、次は貴女の番ね」
 彼女の静かな声が告げる。
「亜理紗ちゃん、あなたは間違った」
 その視線を真正面から受け止め言い放った私の言葉を、だが彼女は鼻で笑った。
「今更何を? 言われなくても、そんな事はこの私が一番良く分かっているわ。ええ、私は間違えた。でもそれは貴女も同じこと」
「なんですって?」
「分からないの? 本当に頭の悪い子ね。今こうして私の前にいる、これこそが貴女が間違え続けた結果でしょう?」
「くっ……」
 そうだ、私も彼女と何も変わらない。ずっとずっと間違え続けている。
「みんな行ってしまったわ。残っているのは私と貴女の二人だけ。どうするの? 貴女も行ってしまうのかしら。それとも……」
 私は、床に横たわる仲間達を見た。その信じられないほど穏やかな表情に、涙が零れそうになる。
 彼女の言う通り、みんなのこの姿こそが私の間違いの証。
「さあ選びなさい、鈴音! 貴女の運命を!」
 私はその言葉に従うように、唇を噛み締め、右腕を振り上げた。
 繰り返される後悔も、果てしない過ちの連鎖も、もうお終い。この一撃に全てを掛ける!
「亜理紗ちゃんっ!」 バシッ!

「ふ……」
 彼女の唇がかすかに緩む。
 私は彼女に向けて放った自分の手の先を見つめ、驚愕に打ち震えた。
「あっ……!」
「ふふ…ふ……」

「ああんっ、またババ引いちゃったあ!」
「ふ……ふああーんんっ」
 涙声で叫ぶ私を前に、彼女は大きな欠伸を漏らした。
「あー、眠くなってきちゃった。ねえ鈴音ぇ、もう終わりにしましょうよお。みんな飽きて寝ちゃったよー?」
 目を擦りながら、雑魚寝用に布団を敷き詰めた寝床を指さす。
「だーめ、最後までちゃんとやるの。久しぶりのお泊り会なんだもん、寝ちゃうなんてもったいないよ。はい、亜理紗ちゃんの番」
「ええー、もうめんどいー。私達って才能ないんだよー」
「いいから、早く早く」
「んもおー。んっ、と。ほらあ、またババだあー……」