>>284 難しいお題が3つも並んでるとホントむずいね。チモシーは諦めた
使用したお題:『馬』『ボタン』『田中』+最後の一文『だが、これで終わりではなかった。』

【まんじゅうこわい、その後】(1/2)

 『まんじゅうこわい』という古典落語がある。怖いもの知らずのクマさんが饅頭が怖いと言うものだから、他の仲間たちがいたずらで饅頭をクマさんの部屋に放り込んだところ、クマさんが全部食べてしまった、と言う話だ。
 本当は大好物だった饅頭をたらふく食べたクマさんは最後に一言こう言って、この落語はオチをつける。「今度は熱いお茶が怖い」と。

 だが、これで終わりではなかった。

 クマさんの満面の笑みと、口元にベトベトくっついたアンコと、一つ残らず消えてしまった饅頭を見れば、さすがにアホな仲間たちだって真相に気付く。
 クマさんをこけにしてやろうと思っていたのに逆にこけにされたのだ。ハラワタ煮えくりかえるとはまさにこのこと。
 お茶を待っているクマさんを一人部屋に残し、アホたち4人は隣の部屋で即席会議を始める。

「さて、今度はクマさん、熱いお茶が怖いっていうじゃねぇか。バカにしてやがる。まだオレたちが気付いてないとでも思ったのか?」

「かもしれねーな。実際、饅頭には完全に騙されて、なけなしの小使い全部使っちまったよ。このままじゃあしまらねぇ。なんかできねーかな?」

「クマさん、今度は熱いお茶が怖いっていってんだろ? だったらホントに怖いお茶を用意してやりゃーいいんじゃねぇか?」

「お、そりゃ名案だ! あいつに一泡吹かせてやんだな!?」

「しぃぃっ、声がでけぇ! 隣にいるクマさんに聞かれっちまうだろ? 静かにヒソヒソと相談するんだよ。……で、どんなお茶を用意すれば、やつぁ怖がると思うかい?」

「そうさなぁ。お茶の上にクモが浮いてるとかどうだろ? お、おれならかなり怖がると思うぜ?」

「バカ野郎。クマが最初何言ってやがったか忘れたか、ハチ? あいつはクモもアリも怖がらねぇって吹いてやがったじゃねーか。ホントかどうかはわからねーが、やめといたほうが無難だ。他ないか?」

「ものすっげーあっついお茶をクマさんに渡すとかどうだろか? 茶碗まであっつい奴をさ。そしたらあいつビビんじゃねーかな」

「バカ野郎。そんな熱いお茶どうやって持ってくんだよ、タロウ? クマさん驚かす前にオレらが火傷しちまうよ。でも熱いお茶ってのは良い案だな。
あいつに渡す直前にお茶ひっくり返して頭からぶっかけてやるのはいいかもしれねぇな。おい、お前は何かないか?」

「お茶の中に饅頭いれとくとか」

「バカ野郎。クマの野郎が饅頭怖がるのはウソだって気づいてなかったのか、田中よぉ。あいつは茶でふやけてても喜んで饅頭食っちまうよ!
 ……でも中に何か入れるってのは名案かもな。何か入れてやるか?」

「牛のフンでも入れとけばいいんじゃねぇか?」

「犬のフン入れようぜ、そこら辺に落ちてるからさ」

「馬のフンもいいよ。確実に腹壊す」

「おめぇらフン好きすぎかよ……。でもまあいいだろ。よし、他に案出せや」

 とまあ喧々諤々のアイディア会議が始まった。あーでもないこーでもないと四人で悪知恵をめぐらす4人組。だんだん楽しくなってきたのか、エグい案やさすがにそりゃダメだろって案も出始めてきた。
 クマさんの嫌がる顔が見たいからって大量の饅頭を買いあさるような連中だ、この手のイタズラは大好物である。まさに悪ガキの顔で4人で延々会議を繰り広げていた。