使用お題:『9』『ぬるぬる』『スライム』『黒髪ロング』
【10個の質問をするゲームのお話】(1/2)
さて、今日はなかなか珍しい勝負をしかけてきたな。
どこぞの動画でやってたのを見て、やりたくなったらしい。まったく、単純な奴だ。曰くイエスノーゲームだとかなんとか。
ルールはこうだ。
テーマに沿ったお題を出す。お題に対して「イエス」と「ノー」で答えられる質問が10回できる。お題を出した方はその質問に対して、正直に答える。9回は。
出題者は1回だけ嘘をつくことができる、らしい。また、予想した答えをリストにして、一括に聞くことも可能らしい。ただし、一回だけ。
うん、一回ルールを聞いただけじゃ完璧にはわからないね。
とにかく一回やってみよう、と言う話になった。お題は「オレが死んでも食べたくない食べ物」。
「あんたの苦手な食べ物なんてだいたい想像つくわよ。ヤマ勘で当ててもいい?」
「そういうのはなしなし! つまんないじゃんか、っていうか速効で当てられそうだからダメ。どうせならちゃんとゲーム形式に則ってやろうぜ?」
我儘な。まあそんな幼馴染の自分勝手な提案に真面目に付き合ってやってる私もたいがいヒマ人だが。
最終的に、答えがわかったら肉まんをおごるという線で決着がついた。本気でゲームに取り組み出す。幼馴染はノートを開いて、シャーペンの芯をかちゃかちゃと出した。
肩辺りまで伸びた黒髪をくるくる弄りだすのは、考え出したときの私の癖だ。
さて、食べ物なんて言われても範囲が広い。まずは答えを大雑把に予想しつつ、その範囲を絞るところからやろう。嘘を見破るのは簡単だ、二重の意味で。
「じゃあ質問一つ目。それは和食ですか?」
「イエス」
だろうな、とは大体予測通りの答えに満足しつつ状況を把握する。次の質問を考える。
しょっぱなミスリードでウソをついてる可能性を考慮して、次の質問はすぐに決まった。
「二つ目、それは調理されていない和食ですか?」
「イエス」
これで和食であることは確定した。このゲームのウソの見破り方の定石は2回聞けばいいのだ。それくらいバカでもすぐに察することができる。
あとついでに幼馴染の鼻を見る。鼻の穴が若干膨れたら嘘をついたり誤魔化したりしてる証拠だ。こちらは正当な方法ではないので、あまり多用したくない。勝ちが確定してしまう。
あまり奴のアホ面は見ないで行く。
和食であることは確定。ただ、調理済みか調理済みじゃないかはまだ未確定。ちょっと不安になる。
幼馴染の出したお題は食べ物だ。調理済みの料理か未調理の現物かで少し事情が変わってくる。後の事を考えると、ここは確定させておきたい。
ちょっともったいないけれど、同じ質問をする。
「もっかい聞くよ? 調理されていない和食ですか?」
「イエス」
正直、悔しい。でも確実な情報が3つも手に入れられたから十分だ。
一つ、和食。一つ、調理されていないもの。一つ、まだ嘘はついていない。
警戒を緩めず次の質問を考える。今度はちょっと時間がかかった。
「……4つ目の質問、それは発酵食品ですか?」
「イエス」
これは思いのほか大きいヒントだった。勝ちを確信する。
日本の料理は大雑把に分けて4つ。発酵食品、生鮮食品、干物食品、そして発酵食品ではない浅漬けのような漬物だ。
3つ目の質問と同じ方法でどれか一つに限定することができれば、それだけでかなり勝率は高まるな、とは思っていたが、まさか一発目で当たりを引き当てるとは思わなかった。
5つ目の質問にまた迷う。私が迷ってる間に、幼馴染が急いでノートに今までの質問とその答えをメモっていた。
こういう細かいところに気がつくのはすごいと素直に称賛する。まあ、単にこのゲームがやりたくて全力を出した結果なのだろうけれども。
もう一度確認したいが、いちいち確認していたら質問数が足りなくなる。なので対策を考える。
ここで一つ気づく。そうか、同じ質問を二回繰り返す必要はないんだ、と。なので次の質問はこうする。
「それは浅漬けですか?」
「ノー」