>>434

使用お題:『野球』『水平線』『同じセリフを3回』『コンビーフ』『厨二』
>>52の続編
【夕焼けに染まる砂浜】

 誰もいない小さな島に私と幼馴染の庄司の二人きりで取り残されてしまっていた。
 とはいっても満潮の関係で今は歩いて移動が出来ないだけで、泊まっていた貸し別荘は海を挟んで歩いていける距離にある島にある。……どうしてこうなった。

 もう1人の幼馴染の達也と庄司のお姉さんの4人で一緒に泊まりの旅行へ出発したのが昨日の話。
 そして達也とお姉さんの急用で庄司と2人になって海開き行ったのが先週の事。その時には熱中症で倒れてしまい、思ったように遊ぶ事は出来なかった。
 それを不憫に思ったのか、お姉さんの伝手でこの小さな島の貸し別荘を借りてきてくれたのが今回の事の始まりである。
 正直なところ、お姉さんに庄司への恋心を打ち明けたのは失敗だったと思う。

「ふぁーはっはっは! この地は既に我が手中にある!」
「何をバカな事やってるの……?」
「見るがいい。あの赤く燃える海を! 我が前世よりのパートナーよ!」
「……うるさいわよ!」
「あ、痛!? ちょ!? もうやらないから勘弁!? 紗佳、ストップ! 悪かったって!?」

 太陽の沈んでいく水平線に向かって手を伸ばし、厨二病全開のバカな発言をしている幼馴染の庄司に向かって砂浜に流れ着いていた野球のボールを投げつける。ついでに砂もぶつけてしまえ!
 中学生の頃は厨二病が酷かったけど、高校生になって落ち着いたと思ったんだけどね。まぁ凄い綺麗な夕焼けだけどさ。
 ……それに、その……パートナーとかはね、もっと他の機会に言って欲しいというか……。

 しばらくそういったやり取りが続いた後、砂浜に座り込んだ庄司の隣に私も腰を下ろす。……お姉さん、ついでに達也、2人きりにしてくれるのは嬉しいんだけど、毎回露骨過ぎる!
 絶対あの2人、もうすぐ満潮で渡れなくなるのをわかってて、この小島に連れてきたよね。……いつの間にか居ないんだもん。

「誰もいねぇ……」
「……そうだね。2人きりね」
「早く戻りてぇ……」
「……うるさいわよ!」
「あ、痛!? え、今のはなんで!?」
「……うるさいわよ」
「わ、悪い……」

 二人きりなのを少し喜んでる私の気持ちも考えて欲しいものだ。ここぞとばかりに庄司の肩に体重を預ければ、庄司も静かになった。うん、こういう時間もいいとは思う。
 少し顔が熱くなってる気がするのはきっと気のせいだよね。……この前はカップルと呼ばれて、庄司は否定していなかったけど私の事どう思ってるんだろう?
 
「あーなんか腹減った」
「……そういえば私も。ご飯食べる前だったもんね」

 ぼんやりと砂浜で2人並んで座り、夕暮れの景色を眺めていく。お姉さんと達也の故意の行動だろうから、このまま潮が引いて歩けるようになるまで放置という事はないと思う。多分、迎えに来てくれるはず。
 そう考えていたら、何やら島の反対側の方からガチャガチャと音が聞こえてきた。

「ん? なんか物音しなかったか?」
「うん、確かに聞こえたね」
「……見に行ってみるか」
「……うん」

 小島の反対側へ見に行って見れば、そこには何やらコンビーフやシーチキン、トマト、コーン、ミカンやモモ等など多種多様な缶詰が置いてあり、多少の調理が出来るように鍋と卓上コンロ、そしてテントがあった。……え? もしかしてこっちで2人で泊まれって事!?
 ちょっと、そこのボートに乗って離れていくあからさまに荷物を置いていった達也、待ちなさい! 流石にその覚悟はまだ出来てないから!?

「……とりあえず飯作るか?」
「……うん、そうだね」

 緊張で心臓が爆発しそうになりながら料理をしたけど味なんて分からなかった。……まぁ食べ終わった頃を見計らってお姉さんが達也を叱りながら迎えにきたけどね。うん、今回はこれで良かったって事にしておこう。