>>31 【呪い】のその後の話にあたります

選択お題『交換』+『幼馴染』

【Guardian Maker】

 農夫が異変に気が付いたのは、いつもどおり迷える魂を刈り取るために移動しているときだった。

 すでに悪霊化している――――?

 微弱ではあるが神格持ちに影響を与える程の力を辿って道なき道を進むと、行方知れずとなっていた一つの世界に行き着く。
 農夫はそこで、神格に近い力を秘めながらも負の感情に支配された人間を見つけた。

『生きながらにして悪魔に転化するとは。――――すでに人の言葉すら紡げぬ、か』

 大鎌を構えて一振り。それだけで目の前にいる人間の魂を刈り取った。
 農夫は魂を手のひらに乗せ、記憶の残滓を検分する。
 そこで見えたものの中には、しばらく前に聖域から姿をくらませたと報告されていた獣の姿があった。
 農夫は原因となったものを見つけて納得する。

 さて、この世界はすでに聖域から外れてしまっており、直接守護する存在が必要だ。
 だが外部から守護者がいきなりやって来ても、一度裏切られているこの世界では到底受け入れられないだろう。
 ならばゼロからその地の人間に育てさせればいい。その守護者としてこの人間をあてがおうと考えた。
 神格に迫る力を持っているならば、なおさら適任だろう。

 したがって交換条件を持って取引を行うことにした。

『人の子よ、そなたが望むままに獣を討ち家族と親しき者らの墓標の前へと捧げよう。代わりにこの世界の護り手になってもらえぬか』

 死んだ魂はその世界に溶け混ざり合い、あらゆるものに宿ることとなる。
 農夫の手の中にある人の魂は、幼馴染が宿るこの世界と共に生きられるならそれでいいと答えた。

 獣はこの世界を飛び出したはいいが失った信仰のために神力が衰え、世界と世界の狭間で漂うだけとなっており、あっさりと首を刎ねられて墓標の前へと捧げられる。

 農夫は人の形をした器を用意して、憎悪と共に記憶が霧散された人の魂を封じると、その世界ただ一つの国に降り立ち王の前へと現れた。

『神に裏切られしこの地に機会を与えよう。この幼き守護者を育て、そなたらの神とするがよい』

 王は幼いながらも古い友人の面影を見つけて深く頷き、かつての名前を呼ぶ。
 その場で王位を王太女に譲位すると、その後は守護者の育成に力を注いだ。

 守護者は人々に望まれる段階で成長が止まるものの、人と共に生きる神として愛される。

〈おしまい〉

※とある小説投稿サイトへと投稿したものに若干の手入れをしています
※死神の出演は52氏の投稿を見たのが切っ掛けとなっています
※農夫=死神なわけですが、このあたりはGS美神で知りました