スポッターが「湿度60%。温度25度」と乾いた声で言う。
俺は「おいおい、RPG7で部屋ごと爆破するのに、そんな情報いらないだろ」
「まぁ、そうだな」
「ターゲットは部屋にいるか?」
「ああ、いる」
「しかし、RPG7なんてよく国内に持ち込めたな」
「中東を経由すればなんとかなるよ。今はああいう情勢だしさ。本当はスティンガーを持ち込みしたかったが、さすがに無理だった」
 スナイパーは冗談を言いながらも、黒光りするRPG7を肩で担いで、トリガーガードからは指を離さない。
スポッターは「さて、取引の五分前でクライアントの指定した時間だ、ファイア!」
「ファイア!」
 スナイパーはトリガーを引いた。
 しかし、砲弾が30メートルも飛ぶと、爆発した。
「爆発はしたから不発弾ではないはずだ」
「まさか、スナイパー・キラー!?」
「ここは危ない」
 スナイパーとスポッターは、身を床に伏せた。
「これなら、五分ぐらいはガードできるはずだ」
「三分で逃げられないか?」
「無理だな、向こうの射程距離は1ブロックはあるはずで、こっちの位置は把握している」
 スポッターは汗を流しながら言う。
「多分、50口径だな。壁をぶち破られたらアウトだよ」
 スナイパーは半ばあきらめたようだった。
「お前、予備の拳銃は持っているか」
 スナイパーは、スポッターに尋ねる。
「持っていることはもっているが、.380ACP弾のグロックだ。はだか同然」
***
 結局、二人は5分間、ここから逃げられなくて、爆音に気づいた市民からの通報でポリスに捕まった。
 撃って空とは言え、そんなものがあり、グロックを持っていれば、逮捕するのに理由はいらなかった。