とあるソフトウェアエンジニアが42歳という若さでこの世を去り、5年が経とうとしている。
31歳でブロックチェーンの先駆けたるP2P技術を実現し、34歳で京都府警に逮捕された。
無罪を勝ち取るまでに7年かかり、カムバック後、心臓の病であっという間に天国へ

もしも生前の彼が、いかんなく能力を発揮していたら? あるいは彼がいまも生きていたら…。
仮想通貨に一喜一憂する日本のIT業界に、ぽっかり空いた「金子勇」という穴。
その大きさを語り告ぐために、若きフォロワーが奮闘している。

イノヴェイターとして脂ののった時期にWinny事件で逮捕され、紆余曲折を経て無罪を勝ち取ったものの、あっという間に他界した不世出の天才。
金子勇がたどった無念の生涯は、「出る杭が打たれる」の典型といえるだろう。

その社会的損失の大きさを伝えるべく、2018年現在、いろんな立場の人間が表現方法を模索している。
なかでもユニークなのが、事件の映画化を目論む古橋智史だ。

「出る杭が打たれない。そういう国にしたいと、本気で考えているんですよね」

古橋はIT系ヴェンチャー企業「スマートキャンプ」を率いる現役の経営者。金子からみて18歳年下の、若きフォロワーだ。
彼は仕事の合間にクラウドファンディングで資金を募り、スタッフ集めや脚本づくりに奔走しつつ、
金子の知人と会う機会をつくり、その生き様について教えを乞うている。

「ぜひ金子さんのことを、多くの人に知ってほしい。彼は発想の天才で、Winnyは彼の生んだプロダクトのひとつに過ぎない。
なのに、あの事件が、彼から貴重な7年間を奪った。最先端にいる研究者の前途を潰したんです」

わたしたち日本人にとって、それは間違いなく悲劇だった。