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ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【120】
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0001この名無しがすごい!
垢版 |
2019/02/02(土) 11:18:14.00ID:WdqvsZjK
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点数の意味
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40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

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前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する【119】
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0101この名無しがすごい!
垢版 |
2019/02/03(日) 14:44:44.33ID:i5XLQGFh
評価よろしく願います。

なかなか来ないバス待ちの停留所で、隣の人物が話好きだったりすると厄介やで。
話しかけてきては、くだらない長話を聞かされて、終わったかと思たら、「次はおたくの話を聞かせてくれまへんか」
じゃあ、まあ、わしの話でも聞いてくれまっか。

『でっち上げ探偵の事件』

早くに両親を亡くしたわしは親戚の酒屋に引き取られた。小学校もろくにいかせてもらえず、土日も休みなしで一日中働かされた。
そこの子供はええもん着せてもろて、ええもん食べさせてもろてたが、わしは下男扱い。着るもんもぼろぼろのボロや。
ええべべ着せてもろてる他の子らがうらやましかった。
ところがわしが十三歳の時、この酒屋が潰れてもうた。原因は酒に水を混ぜて、売ってたんがバレたんや。
最初はあそこの酒は呑んでも悪酔いせえへん、ええ酒や、ゆうて評判やったんやが、
そのうち、普通に酔わへんさかい、どうもおかしい……と噂になって、とうとうバレたわけや。
わしにしてみたら、ざまあみろやけど、路頭に迷ってしもた。
さあ、それからは何でもやったでえ。靴磨きから新聞配達、段ボール集めに焼き芋屋に占い師……、
占い師は嘘やけどな。
そのうち、うまくいったのが焼き鳥の屋台やった。
四天王寺さんの境内で米粒蒔いてスズメとか鳩とか捕まえてきて、羽毟ってつけ焼きにするんや。
原材料費ほぼゼロやから、そこそこ儲かった。けど、スズメも鳩も無限に沸いて来るもんやないし、
ある時捕まえたなかにインコが混じってたんや。それが近所の金持ちのおばはんの飼ってるペットらしくて、
何百万もするという何とかインコとかで、それを焼き鳥にしたんが何でかバレてしもて、大騒ぎになった。
それで焼き鳥屋も辞めたんやけど、お品書きに「インコ百三十円」て書いたのがマズかったんかな。
そのあと、しばらくぶらぶらしてたんやが、十六歳の時に船場のとある老舗の従業員になったんや。
従業員ゆうても丁稚やがな。大阪の船場のあたりには、いまだに古いしきたりが残っとるが、
その店では、とくにそうやった。社長も「旦那さん」、専務は「番頭さん」、社長の奥さんは「ご寮はん」と呼ばれとった。
旧弊な店やったで。着るもんも、木綿のお仕着せと前掛け。それ以外は許されへん。
もちろん、酒も煙草もあかんし、朝は六時には店開けるんで五時過ぎにはわしら丁稚が掃除せなあかん。
飯は三度とも無ぐ飯に具の入ってない味噌汁に香こだけや。
若い時分やし、たまには肉やら魚やら食わな力も出えへん。
しかも、丁稚の間は給金も出んのや。今の若いもんには考えられんやろうが、あの辺では、そういう昔ながらの店が残っとたんやなあ。
続く
0102この名無しがすごい!
垢版 |
2019/02/03(日) 14:47:04.56ID:i5XLQGFh
わしは市松ゆう名前で呼ばれることになり、丁稚としての第一歩を踏み出したわけや。
さあ、あれは忘れもせん、十二月のことやった。その店では今では、健康食品商いしとったんやが、
もともとは江戸時代にイモリの黒焼きが主力商品で繁盛したそうで、それが今の時代になって、
健康食品を扱うようになったらしいで。
中でも売れ筋なのが蜂蜜で、これがただの蜂蜜やのうて、
秦の始皇帝に献上されていたとかいう触れ込みのスーパーローヤルゼリースペシャルとかいってな。
ご寮はんの実家が和歌山の熊野で養鶏場をしてはる。そこから仕入れた、本当のことを言うと安もんなんやけど。
ところがこれが「死にかけのじいさんんに飲ませたら、十日で回復して元気になった」ゆう噂が噂を呼んで馬鹿売れや。
この噂ゆうのが、わしら丁稚が銭湯や散髪屋とかで、一所懸命に撒いたもんやけどな。
そんなんでも阿保は騙されて買いよんねんな。
ただし、情報管理だけはしっかりしてたで。ただの蜂蜜やとバレたら元も子もないよって、
業者が届けに来るんは夜中の三時。丁稚、手代総出で倉庫に運び込む。
さらに、もっともらしい壺に計量器で入れ替えるんやが、その作業も深夜中にやってしまう。
朝は五時には起きてなあかんさかい、寝る暇もないわけや。
そんなある日のこと、事件が起きた。
あれは昼前の十時くらいやったかなあ。腹がぐうぐう鳴ってた。
まあ、いつも腹は空かせてたけどな。わしともう一人の丁稚の利松が、あの蜂蜜の宣伝用に、
何日か前に熊野から仕入れた古い古い蜂の巣を店の軒下に吊るしとったんや。
もちろん煙でいぶしてから取ったもんやさかい、中の蜂はみな死んどる。
みな、死後、ハッチ、ゆうてな。……知らんか?
そしたら番頭はんが「市松、利松、倉庫から蜂蜜運びだしまひょ」ゆうて、
大声で帳場から怒鳴らはったんで、二人で店の奥に行って、倉庫の扉に手えかけたんやが、
これが開かへんねん。鍵は外からしか掛からん構造やが、そもそも鍵は掛かってないし。
なんで開かへんのか、さっぱりわからんかった。
とにかく、二人で「うんとしょーい、や!」と、掛け声一番、渾身の力を込めたら、みちっ、みちって、
少しづつ扉が動き出して、とうとう、ずるずるずるずると開きよった。
見ると扉全体にべったりと蜂蜜が塗り付けられてる。
それが乾いて、接着剤のようになりよったんやな。
倉庫の中から、胸悪なりそうなほどの甘い匂いが押し寄せてきたうえ、覗き込んでみてわしらが唖然となった。
続く。
0103この名無しがすごい!
垢版 |
2019/02/03(日) 14:47:59.48ID:i5XLQGFh
十畳くらいある倉庫の内部は壁といい、天井といい、床といい、どこもかしこも蜂蜜でぼとぼとになっとったんや。
天井からは雨のように、むしろ飴のように蜜が滴り落ちてる。
まるでわしらが鉢になって、蜂の巣の中に入り込んだような気分やった。
でも、驚きはそれだけではすまんかった。
ちょうど真ん中あたりに女が大の字になって横たわってた。
黄色のワンピース着た若い女や。蜂蜜の海に半ば沈むような状態で、もちろん全身が蜂蜜まみれや。
一目で死んでると分かったのは、顔の苦悩の表情があったせいだけじゃなく、鼻や目、口に蜂蜜が入り込んどるのに、
びくりとも動かんねん。これは間違いなく、死んでるということや。
扉の外から見る限りでは、外傷やら、首を絞められた跡とか見あたらんかった。
わしはでも、その女に見覚えがあった。
朱美、ゆう女でようするに旦那の妾や。ご寮はんもものすごい格気しいやから、
旦那はご寮はんには絶対に知られんように、こっそり囲うてはったんやが、わしら丁稚は届けもんをしたり、
文を運んだりさせられることが、たまにあったさかい、顔を知ってたんや。もちろん、ご寮はんには内緒で。
正直言って、ご寮はんはえらいヒステリーで奉公人のちょっとしたしくじりにも、めちゃくちゃ叱るし、
お金には細かいし、店のもんには質素な食事をさせといて、自分はええもん食って、ええ着物着て、やたらとプライドは高ぅて……、
旦那もあれではやっとれんやろ。
妾持つ気持ちもわかるで、ゆうて、わしら丁稚は旦那に同情しとったほどや。
旦那はいつも奉公人をかわいがってくれてたさかい。変な横文字使うのだけが玉に瑕の、人のええ、小心な人でな。
しかし、なんでこの女が、蜂蜜の倉庫で死んでるのか。わしは見当もつかんかった。
そもそも、店にはこれまで一度も足を踏み入れたこともないはずの女や。
しかも、信じられんことに、床一面に敷き詰められた蜂蜜の上には、なんら足跡らしきものもついとらん。
もし、これが他殺やとしたら、班員はいったいどないして逃げたんや。
わしと利松は手代の耕助はんに報告した。耕助はんは苗字を金田ゆうてな、
わしより四つ年上屋が、しばらく韓国の釜山に住んでたとかで、韓国語に堪能やった。
店の扱っとった、いかがわしい商品の一部は韓国の業者から輸入しとったんで、
耕助はんは重宝され、しかも、ご寮はんの覚えめでたい男で、
ご寮はんがお出かけの時には、いつも耕助はんをお供に連れて、行きはってな。
耕助はんとか、耕さんとか呼ばれてた。
続く。
0104この名無しがすごい!
垢版 |
2019/02/03(日) 14:48:58.57ID:i5XLQGFh
耕助はんは、わしらの話を聞いて、すぐさま番頭の佐清はんに伝えた。
番頭はんは自ら倉庫に足を運び、現場を見て腰を抜かしかけ、
誰も入ってはならん、と、店のもん全員に厳命したうえで、旦那に指示を仰いだ。
「オーマイガッ!」
旦那はそう叫んで震え上がった。
死体が見つかったという恐怖もさることながら、妾を置いてたことをご寮はんに知られることのおののきのほうが、強かったと思う。
幸いなことに、その時、ご寮はんはお茶の先生の所に出かけてるとかで留守やった。
「オー、マイハニー……かわいそうなマイハニー……」
旦那は妾の死骸を見つめて長いこと涙にくれてはった。
蜂蜜まみれのハニーなんて洒落にもならんが。
何とか警察に知らせんで内々に処理でけんかと、旦那は番頭はんと相談しとったが、
なんちゅーたかて殺人事件かもしれんことを隠したら怖いことになるでってことになって、
番頭はんは近所の派出所に出向いた。

すぐ巡査が来るわ、府警の刑事が来るわ、と、事はえらい騒ぎになっていった。
それで警察の調べで、どえらいことが判明した。
朱美の死因は毒物による中毒死やそうな。しかも死体の陰になってて見えんかったが、注射器が一本転がっとったらしい。
ただ、毒物の種類までは時間がかかりそうで、まだ特定できとらん。
わしはピンときて、旦那の顔を見た。旦那はどっちが死人かわからんほど、幽霊みたいにまっさおなお顔になっとった。
この店のもんで注射器なんぞ持っとるゆうたら旦那しかおらんかった。
旦那はヒステリーな、ご寮はんの相手することに疲れてしもて、ヒロポン集毒になっとったんや。
戦後の悪い習慣は、船場の旦那衆の間で悪癖が蔓延しとったのが、あの頃ではもうけっこう珍しかったかもしれへん。
案の定、注射器から旦那の指紋が見つかった。
旦那は直ちに別室に連れていかれた。
それから、手代から丁稚、女衆連中まで奉公人一同が集められ、事情聴取や。
わしと利松は第一発見者ゆうことで念入りに調べられた。
しゃあけど、取り調べもくそも、何にも知らんさかいな。
さらに続く。
0105この名無しがすごい!
垢版 |
2019/02/03(日) 14:50:05.20ID:i5XLQGFh
カイゼル髭を生やした横暴な態度の刑事が
「お前が倉庫に入った時、中には誰もおらんかったか」
「へえ」
「倉庫の中に、なんぞ怪しいものはなかったか」
「へえ」
「怪しいもんちゅうと?」
「怪しいもんは怪しいもんや」
「さあ……」
「まちがいないか」
「まちがいおまへん。なあ利松」
「そうかなあ……」
頼りないやっちゃで。そんな言い方では、わしの証言まで疑わしいなってしまうがな。
そこに刑事が、
「おまえら丁稚は、あの店でいろいろと変な薬を調合したりしとるようやが、
あの旦那に頼まれて、毒を妾に注射したんとちゃうんか。
隠し立てして、警察に嘘ついたら、後で酷い目にあわすからな」
「酷い目て……、わしら何もしてまへん。そもそも倉庫の中は、べた一面に蜂蜜が敷き詰められてて、
誰かが出入りしたら、足跡が残るはずでっしゃろ。そんなの一つもついてまへんで下で。なあ、利松」
「ああ、そうかなあ……」
利松は頼りにならん。
刑事はカイゼル髭をピクリとさせ自慢げに、
「殺した後に蜂蜜を撒いたとしたら、足跡はつかんやろ」
「そら、そうでんな」
「……」
「まあええ、犯人は割れとんねん。あのけったいなハイカラな言葉を使う旦那を絞り上げたら、
恐れ入って白状しよるやろ。あの旦那、妾と仲違いしとる様子はなかったか。妾に男ができたとか」
「知りまへん」
「旦那のほうに他の女ができた。ゆう可能性もあるな。
別れ話に妾が怒って店まで乗り込んできたところを嫁にバレるのを恐れて、邪魔になって殺したとか。、うん、これはいける……」
わしはだんだん腹が立ってきた。
大した証拠もなしに、主人を犯人呼ばわりするのは許せん。
持って生まれた正義感が、ここにきてむくむくと頭をもたげてきた。
わしは常日頃、癇癪持ちで浪費家のご寮はんの尻に敷かれてはった、人のええ旦那のことが好きやった。
「それだけで主人が殺したゆうんは無理ちゃいまっか。
怒った妾が店まで来て主人へ当てつけに自殺ってなゆう線も考えられまっせ」
「言うやないか。ほな、あの注射器がどないや」
「中に毒は入ってたんか?あの女がどういう毒物中毒で死んだかがわかって、その毒が注射器に入ってたちゅうんやったらとにかく、
まだ何もわかってもへんのやろ?今の時点で主人を犯人やと決めつけるんはやめてもらいまひょか」
「き、貴様、警察の捜査にケチつけるんか」
利松がわしの袖を引いて、
「市やん、黙っとき」
びびった声を出したが、わしはもう止まらんかった。
「主人がヒロポンやってたんは、店のもんやったらだれかて知ってます。
その誰かが、主人に罪をなすり付けようとして注射器置いたんと、ちゃいまんのか。
そもそも、主人が犯人やったら凶器を現場に残しとくはずおまへんがな。警察はそんなこともわからんかなあ」
「貴様、本官をなぶっとるんか!」
「とんでもおまへん。ただ、主人は犯人やないと言いたいだけですわ」
「貴様は忠義から主人をかばおうとしとるのか。それとも真犯人を知っとるとでも言うんか」
「ああ、知ってまっせえ」
ゆうてもた……。
「なんやと!」
もちろん、はったりやったけど、引っ込みがつかんようになってしまったんや。
「刑事はん。この店の全員を倉庫の前に集めてもらえまっか。そこで犯人を名指ししまっ」
「本間やな。丁稚だけに、でっちあげやったってオチやったら、ただではすまんで。拳銃で蜂の巣にすんで」
「あははははは、蜂の巣になったら店先に吊るしてもらおか」
「ぬかしたな。よーし、わかった!あとで吠え面かくなよ」
刑事は掌をポンと叩き、旦那や番頭はんも含め、店の人間全部を倉庫の前の狭い場所に集合させよった。
さあ、大変なことになりよった。でっちあげ探偵の推理ショーが始まるわけや。
とゆうても、なんもわかってへんのやけどな。
もうちょっと続く。
0106この名無しがすごい!
垢版 |
2019/02/03(日) 14:54:41.52ID:i5XLQGFh
「さ、この丁稚が、真犯人を指摘するそうや。皆、よう聞いとれよ」
刑事はカイゼル髭をぴくぴく震わせ、馬鹿にした口調で言い放った。
「あほなことを、これ。丁稚の分際で、そんな大それたことを言うもんやない。
お前は引っ込んどり」
番頭はんが間に入ろうとしたが、刑事はもちろん納得せんし、
わしの人生最大の窮地やった。
脇の下から冷や汗が垂れる。推理小説やあるまいし、ただの丁稚が殺人事件の犯人をわかるわけもなかったんやが。
手代の耕助はんも心配そうな顔をしてるのを見て、
「降参や、あんさんがやった……ら」
と探偵を代わってもらいたくて、そうつぶやいた。
皆の視線がわしに集中しとった。もうどうにもならん。
しかし旦那は一人で、蜂蜜にまみれて横たわる妾の死骸を見つめ、
「おお……どうして死んだんや、マイハニー……」
と、しくしく泣いている。
「犯人は……この中に、いて……ない」
さすがに、理由もなく、ここに集まった誰かを名指しできなくなったわけやねんけど、
わしはとっさに声に出してそう言ってしまった。
コントならここで皆がずっコケるとこや。
「ハニー!なんかしてけつかんねん!」
わしはもう怒鳴るようにゆうた。その時、ある人物の顔色が変わったのを見逃さなかった。
なんで、顔色が変わったか、さっぱりわからんかったけどな。
その顔色の変わりようは、ただ事ではなかったんや。
すかさず、わしは、
「犯人は……、犯人の名前は……」
次で終わります。
0107この名無しがすごい!
垢版 |
2019/02/03(日) 14:55:27.81ID:i5XLQGFh
そこまで言ったか言わないうちに、わしの言葉に首をがくんと垂れたやつが出た。
金田の耕助はんや。
「耕助はん……、もう何もかも言うてしまいなはれ」
わしが促すと耕助はんは下を向いたまま話し出した。
「市松、おまはんは何もかもお見通しのようやな。もう白状してしまうわ。
実は……、あの妾殺したんは、ご寮はんです」
「なんやと!」
旦那が声をあげたが、耕助はんはそっちを見んようにして、続けた。
「ご寮はんは旦さんが浮気してはるのを知ってはりました。嫉妬深いご寮はんのこと、
とても許せませんでしたが、旦さんを直接咎めるのは、人一倍プライドの高いご寮はんにとって耐え難いことでした。
思い余って、ひそかに女を殺す計画を立てたんです。そして、わたいを共犯に選らばはりました。
最初は断ったんです。、そんな恐ろしいこと……。
でも日頃、目を掛けていただいてる恩のあるご寮はんのお頼み。とうとう引き受けてしまたんです」
涙ながらに告白する耕助はんに刑事が言った。
「どうやって殺したんや」
「はい、先日、熊野のご実家から蜂の巣を取り寄せた際、生きた蜂を数匹、巣の中に隠しといてもろたんです。
今日、私が旦那のお使いと偽って、あの妾の家に参りまして、旦那の急用やさかいと、
店に来とくなはれというと、二つ返事でやってきよった。
皆の目のない隙に、座敷に上げて、睡眠薬入りのお茶を飲ませて、寝入ったところを倉庫に運んだんです。
扉を閉めた後、計量器をあの女の口にあてがい、蜂蜜を流し込んだんでおます。
それから、倉庫に積んであった瓶を叩き壊して、天井やら壁やら床やら撒き散らしました。
ついでに扉にも糊がわりに塗りたくりまして。
最後に蜂の巣を床に何度も叩きつけて、這い出てきた蜂が飛び回るのを確認してから、
巣を持ったままそっと出て、扉を閉めました」
わしの脳裏には、怒り狂った蜂が蜂蜜の海の中で眠り込んでいる女の体を刺す光景が浮かんだ。
スズメバチなら一匹でも刺されれば死に至ることがあるというさかい。
まして何匹もの蜂に無抵抗の状態で刺されれば……。
「その蜂はどこへ行ったんや」
刑事の質問に耕助はんは、
「あそこでおます」
そう言って朱美の死骸を指差した。と、その時、喉のあたりがひくひくと蠢いて、
紅を塗った朱唇がひとりでに開き、そこから一匹の大きな鉢が現れ出てきた。
続いてもう一匹…、さらにもう一匹と……。
「胃の中まで蜂蜜を詰め込んどいたら、蜂はきっと体内に入っていきおるやろと思て」
「うむ。部屋中に蜂蜜をぶちまけたのも、妾に蜂蜜を飲ませたのをわからなくするためやったんやな」
と刑事。
「なんで妾とこで殺さなんだ」
「ご寮はんが店で殺したほうが旦さんもショックが大きいやろうて。
注射器を置いとくのも旦さんに罪をかぶせようと、ご寮はんが考えたことです」
それを聞いて、旦那は気絶してしもた。何もかも嫉妬に狂ったご寮はんが手代を使ってやらせたわけやったんや。
「今頃、ご寮はんはアリバイ作りのために熊野の実家に向かってるはずでおます。
さっき、市松どんに、『耕さん、あんさんがやった……』『犯人、南下してけつかんねん……』と言われた時には心臓が止まりそうでした。
しゃあけど、市松どんにこうも簡単に見破られるとは、悪いことは出けんもんでんな」

耕助はんは勘違いしてたんやが、わしは、そしらぬ顔で探偵っぽく、
重々しくうなずいといた。
こうして事件は落着したんや。
わしは、警察で表彰されたうえに、事件を解決した探偵として名が通るようになったわけやねんけど……。
おっと、もうそろそろバスの来る時間やないか。
で、なんの話やったかいな。(了)

なんにせよ、長文読んでいただいて感謝。
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