総評
途中、多くの人たちが「難しい」と漏らしたとおり、第49回ワイスレ杯は苦戦の跡が伺われる厳しい大会になったようだ。
「別れるならはるがいいね」とあなたは言った。この一文を文中に入れること。
このような、一文を文に組み込む形式のお題は以前にもあった。
例えば、「こんな日が来るとは思わなかった」の一文を入れるというお題の回には、
「難しい」というような弱音を目にすることはなかったと記憶している。

今回のお題を難解たらしめるものの一つに「別れるなら春がいい」という命題に対し、解答を用意しなければならない、という言わば「大喜利」的な要素があること、
もう一つは、指摘の通り「あなた」という言葉により、人称や、関係性の選択肢を制限される、といったところにあったのではないだろうか。
「別れるなら〜」と対話をするふたりの関係性において、相手を「あなた」と呼ぶ、そこには若干の距離をもたせなければならない。
そこを誤ると「別れるなら〜」の一文が浮いてしまい、むしろ展開において好ましくない悪文として浮き上がってしまう。
かといってその一文を活かそうとすれば、どこかで見たようなステロタイプを甘んじなければならない。

苦心の跡を感じさせる作品は、このどちらかを諦めた部分にあるように思う。

そんな逆境を物ともせずあの一文を、もっと言えば「あなた」を逆手にとったり、純文学的雰囲気を以って調和させたり、
と驚きを覚えながら読んだ佳作が散見されたのは、
偏にこのスレの住人の筆力の高さによるものだと思う。

とりあえず、お疲れ様でした。