>>185
 完読しました。ギャグコメディ主体の内容だったので楽しく読ませていただきました。
 以下は感想になりますが、一ワナビの個人的な趣味趣向に基づく内容です。あまり重く受け止め過ぎず、軽いアドバイス程度に

※ストーリーの開始について
「貴族としての地位を失いたくない少年がそれを守るために奮闘する話」
 という本筋はわかったなおですが、それが示されるまでが少々長かったと思います。
 借金が莫大過ぎてどうしたらいいのかと困惑するシーンが長く、早い段階でディスに対策を練らせるシーンを入れていただければ、
 特に問題はなかったと思います。そうすれば誰が何をする物語なのかすぐにわかりますので。

※アイデア
 ラノベでは珍しい貧乏プラス家族愛モノですね。新鮮な感じがしたので楽しく読ませていただきました。
 ですが、ネタとしては古臭い感じが否めません。漫画やアニメで何度も見た覚えがあります。
 貧乏貴族が右往左往するだけでは弱いです。ラブコメやエロといった流行の要素もありませんし、女の子に萌える作品でもありません。
 ヒロインと呼べるキャラがいないのもどうかと思います。
 それと貧乏を強調するためだと思いますが、同じ内容・表現の使い回しが多くてうんざりしました。

※キャラクター
 どのキャラも個性的でよかったと思います。特に終盤の親父はカッコ良過ぎでした。
 ……余りにも唐突だったので「作者の都合で動く人形」という感じがしないでもなかったですが。
 それとヒーマについてはどうかなと思います。
 家族を壊す障害として描かれたわけですが、偶然出会った主人公に恋愛感情を抱き、愛情表現として精神と家族を崩壊させようとする……人はこれを作者の都合で動く人形と言います。
 てっきり原住民の子孫で、ディス一家に復讐をしようとしているのかと思いました(埋蔵金云々はその伏線かと思っていました)。
 なので終盤の決戦は拍子抜けでした。ただの狂人かよ!という。
 この設定でしたら、私ならヒーマはディスのアンチテーゼとして描くと思います。たとえば、

・正体はディスの生き別れの妹
・ディスと同じように貴族に引き取られ、裕福な生活を送る
・しかし家庭環境は劣悪だった(たとえばヒーマが引き取られた途端、子供が生まれたのでヒーマは蔑ろにされ続けた)
・義両親から虐待されて育ったので、それを愛情表現として受け取ることで自我を保ち続けた(好きな人を傷つけるのはこのため。生徒会の一存のパクリですが……)
・自分は本当の子供じゃなかったと知り、家出をして生き別れの兄に会いに行くが、彼は貧乏ながらも家族とは仲が良かった(義父が酔って口を滑らせたとかそんな理由です)。
・家族愛への飢えと嫉妬からディス一家を崩壊させようと画策する。

 ……と、こんな感じになるかと思います。
 というのもヒーマの結末は本作の作風とは会わないように思えるのです。斬られて刺されて逮捕されて裁かれるというのは、「家族愛」をテーマにしている割には凄惨で救いがなさすぎます。ドラゴンの時とは偉い差です。
「家族愛」をテーマにしているのなら黒幕もそれに絡んだ背景を持たせてほしいかなと。
 このようなアンチテーゼ的要素はラノベではよく見られる設定だと思います。
 ちなみに一番好きなキャラはフロルだったりします。次点でヒーマです。

※ストーリー
 好きな作風だったので楽しく読めたのですが、新人賞作品としては弱いと思います。
 アイデアの項でも触れましたが、ネタの古さと少なさが問題かと。
 読者は飽きっぽいのです。好きな要素が一つでもあれば原動力にしてページをめくりますが、閉じてしまうのも早いものです。
 借金を完遂していないのも「続き」を意識しているようで、個人的にはすっきりしませんでした。
 受賞後には改稿されるので、応募時くらいは完結を意識した終わり方にしてほしいかなと。

 色々書きましたが、構成や文章、話の運び方など市販のラノベと比べてもそん色のないものでした。
 いつプロとしてデビューしてもおかしくない感じです。
 以上になります。