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お題:『マインドコントロール』『百人組み手』『媚薬』『理科室の実験』『レモン』

【乙女心と春の空】
 ゴロゴロと雷が鳴り、一瞬の稲光がその部屋の惨状を映し出す。一人の少女がゼイゼイと息を荒げ、手に持ったスチール椅子をガタリと落とした。
 疲労感に膝をつく。かつて彼女が部活で行った、百人組手を終わらせた時さえ、ここまで疲れ切ってはいなかっただろう。
 やや虚ろな瞳で部屋の中で倒れている男女を見る。

(やってしまった)

 少女は、そう思った。

 ******

 鼻唄を歌いながら、白衣の少女が人参を刻みレモンを絞る。ジューサーに牛乳を入れてそれらを混ぜ合わせると、小鍋に入れて火にかけた。
 傍から見ている限りは料理でもしている様に映るだろう。ここが、理科室で無ければだが。

「ちょと、ミーナ!! 解いて!! ほ〜ど〜い〜て〜!!」
「……」
「ちょと、高梨、アンタもなんとか言ってよ!!」
「桧山先輩、仲代先輩が本気なら抵抗しても無駄ですから」

 理科室の端には一組の男女の生徒が縄で縛られていた。女生徒の名は桧山 詠美。女子空手部ではあるが、白衣の少女、仲代 美奈代の幼馴染と言う事で、ちょくちょく彼女の“実験”に巻き込まれている薄幸の美少女である。

「ふっふぅ〜。エイミー、大丈夫だよぉ〜、ちょぉっとした実験に付き合って貰うだけなんだからぁ〜」
「それが嫌だって言ってんのよ!! てか、高梨、何でお前は平然と縛られてんのよ!!」
「いや、下手に抵抗するより、大人しく従った方が色々と良い目も見られますんで」

 美奈代の後輩で同じ科学部の高梨 陽太は、縛られたまま諦観の籠った目でそう言う。

「だよねぇ、高梨君は良い子良い子!」

 そう言って美奈代が陽太の頭を抱きしめながら良い子良い子する。意外に豊満な胸に抱きしめられた陽太は、鼻を膨らませ、濁った瞳でニヤケていた。

「ダメだ、こいつ、洗脳されてやがる」
「ぶ〜、誰も高梨君にマインドコントロールなんてしてないよぉ?」

 確かに彼女にそんな気は無い。だが陽太は、実際“堕ちて”いるのではあるが。そこが天然ぽよんぽよん系女子である美奈代の恐ろしい所だろう。
 その事実に、詠美は頬を引き攣らせる。

「って、言うか、無理矢理アタシを連れて来て、何しようって言うのよ!!」
「ぶ〜、わたしは無理矢理になんて連れてきてないもん!」
「あ、ホルマリンを嗅がせて、椅子に縛り付けたのはオレです」
「ちょ、犯罪!! てか、じゃぁ、何でアンタも縛られてるの!?」
「趣味です」

 (ダメだ、コイツ何とかしないと)……詠美はそう思った。

「ふっふぅ〜。今日は媚薬の実験をします」
「は?」
「!!」

 ガタッ!

「は〜い、高梨君は落ち着いてねぇ」
「え? いや、ホントに?」
「本当にぃ〜」
「え? 何で?」
「ふっふぅ〜、昨日、クッ〇パッ〇で、『自宅で簡単、媚薬レシピ』(注、有りません)って言うレシピ紹介を見付けたからぁ〜、やってみたくなっちゃってぇ」