お題:『トライアル』『レビュー』『クリスタル』『マシマシ』『午前零時』
【トライアルセクション】(1/2)
埠頭は、午前零時を過ぎたと言うのに、煌々と灯りがともり、疎らであるが人影も出ている。
都内へと運ばれる物資が、次々と運び込まれ、湾岸用リフトが絶え間なく動いていた。
「大忙しだな、仕方がないが……」
その、復興の為の支援物資の積み降ろしを尻目に、男は、寂れた倉庫街へと歩みを進める。
待ち合わせ場所である倉庫へと赴いた天津 恒は、その廃墟然とした佇まいに眉根を寄せた。
「本当に、ここで合ってるのか?」
待ち合わせは午前零時三十分、場所は湾岸倉庫17番。記憶と照らし合わせた場所は、確かにここだ。
「待っていましたよ? 天津さん」
やけに耳に残る老人の声に、恒は、ビクリと肩を震わせ振り返る。
いつの間にそこに居たのか、老人は杖をついた姿勢で佇んでいた。
「あんたが……あー」
「はい、依頼人の山田 太郎です」
あからさまな偽名に恒が溜め息を吐く。
しかし恒は、ここに仕事をしに来たのだ。特に彼の場合、依頼人が訳ありと言うのも良くある事だった為、その事はスルーする事にした。
山田に連れられ、倉庫へと入る。と、途端に地面か揺れ、倉庫中央にポッカリと穴が開いた。
山田は躊躇うことなくその穴に入って行く。
恒も、渋面を作りながらも、その後に続いた。