0326この名無しがすごい!
2020/06/07(日) 23:58:02.16ID:d4D3eHqmスレ6→294の続編、前々回お題作品です
使用お題→『誕生日』『たこ焼き』『ダブルミーニング』『女装』『過疎』
【彼女たちと僕の一日】(1/3)
ここは迷宮の第六層。
「わわわきゃっ! 魔法使いさまー、やっぱりっ、ちょっとっ、無理ですー! 攻撃が重いですー!」
「やっぱり無理かー。ファイアボール!」
小さなドワーフの少女が、大きな盾で、オーガファイターの拳を受け止めている。
単調で工夫のない攻撃だが、両手で盾を支える彼女、新人探索者のカリンは、相手の腕力に対して力負けしているようだ。
そんな彼女を尻目に、僕は後衛のゴブリンメイジに集中する。
「あわわわ、助けてっ……あっ、ありがとうございます、ダリアさん」
「いえ、あとちょっとだけ耐えてくださいね」
横でレッドゴブリンの相手をしていたダリアが、一度だけオーガファイターに斬り付けた。
途端にオーガファイターの動きが鈍る。竜人の剣か、ドワーフの盾か。分かりやすく迷っている。
「ファイアボール! ……当たらない!」
今日は調子が悪い。魔法三発で倒せるはずの相手に、六発も費やしてしまった。
ダリアは既にレッドゴブリンを片付けて、カリンと二人でオーガファイターを囲んでいる。
カリンの後ろから魔法を連発する。オーガファイターは四発目で息絶えた。
「あ、危ないところでした。ダリアさん、魔法使いさま、ありがとうございました」
「いえ、やっぱり第六層は、私たちには早かったようですね」
「ごめん、なんか調子悪くてさ。魔法が当たらなかった」
ダリアが、いつもと変わらない表情を僕に向ける。
「第六層からは、ゴブリンたちの動きが素早くなります。魔法が当たらないのは、きっとそのせいです」
そうなのか。なんかそんな気はしてた。
「今日はもう上がった方がいいでしょう。カリンさんはお疲れでしょうし、ご主人様の魔力切れも心配です」
不慣れな階層で、経験者の言葉に逆らう理由はない。僕たちは来た道を戻る。
各階層の入り口には転送装置があり、迷宮ギルドの係員が待機している。
人もゴブリンもいない通路の先。暇そうに突っ立っている人影が、僕たちの心を落ち着かせる。
三人分の手数料を支払って、僕たちは地上へと帰還した。
*
「なんか、初めて迷宮都市に来た時のことを思い出します」
地上の雑踏を目にして、そんな言葉がカリンの口から飛び出した。
「どゆこと?」
「……私の故郷って、すっごい過疎の村だったんですけど。第六層みたいな。第五層は、まだ人がいたじゃないですか。だけど第六層は、人がすごく少なくて」
どこか遠くを見る目で、そんなことを語り始めた。
「今、地上に出てきて。ああ、私って、こんな都会にいるんだって。ここで頑張るんだって。そう思っちゃいました」
彼女なりの詩情、とでも言うのだろうか、僕にはよく分からなかった。
ダリアはどう思ったんだろう。