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スレ6→338の続編、前回お題作品です

使用お題→『アンドロイド』『ゲップ』『エクスタシー』『メイド』『オートマータ』

【彼と私の、また別の一日】(1/3)

 打ち捨てられた、過去の断片。拾い集める、現在の私。昨日も、今日も、そして多分。

「ひどいなー、ここ」
「そうですね。何かあるのではないかと思いましたが」
「期待させておいて何もない」
「まだ分かりませんけどね」

 今日も私たちは地下を進む。この階にはリサイクルボットがいない。だから当時のデータが残っているはず。少なくとも、そう期待したのだが。

「そりゃ分からないけど、こうもごみばかりだと、ちょっとね……」
「そうですね」

 暗闇に沈むネオン街。繁華街だったと思われる場所。
 大小様々なビルが立ち並び、それぞれに色取り取りの……当時は色取り取りだったであろう、朽ちた看板が掲げられている。

「ちょっと危険だけど、建物の中まで調べてみる?」

 建物の外や道路に面した場所は、一通り確認した。めぼしいものはなかった。
 破壊されたデータ。消去された空白。それがきっと最後の姿。

「そうですね。ですが無理は禁物ですよ」
「もっ、もちろん。じゃあ決まりだね」

 そう言って、彼は情報端末を操作し始める。作ったばかりの地図の上に、今まで探索した場所の写真が表示されている。

「この『メイド喫茶』とかってのはどうかな」
「理由を伺っても?」
「それは……看板の写真の子がダリアさんに似てるから! じょっ、じょじょじょ冗談だよ!」

 いわゆるメイド服に身を包んだ女性が二人、カメラ目線でほほ笑んでいる。

「冗談ですか」
「うっ……でも、ちょっと似てるかなー、って思ったのは本当だよ」

 言うまでもないが、彼女たちは生身の人間だ。全身を機械化した私とは違う。

「それなら、こっちの子はカリンさんに似てますね」
「ああー、そうかも」

 カリンは新人探索者で、言わば私たちの後輩だ。最近は一緒のことも多いが、今回は別行動だ。

「こうして見ると、ごみばかりでもなかったね」
「そうかも知れませんが、私たちが探しているものではありませんね」
「そうだね……あっ、この『エクスタシー』……ごめんなさい真面目にやりますゆるしてください」