お題:『マッハ』『あやかし』『マツキタツヤ』『連没くん』『ストレス解消』
【古今おとろしばなし】(1/2)
昨今は科学万能社会となり、迷信は駆逐され、“あやかし”などと言う物は居なくなったと言われる。
だが、それは本当だろうか?
これは、私が先日出会った妖怪の話だ。信じるも信じないも貴方次第だが。
【その一】
何時もの通り会社から帰宅した私は駅前の通りを歩いて居た。蒸し暑く、ややぼうっとしていたのは確かだろう。
ふと、音が途切れたと思ったその瞬間だった。
『うわんっっっ!!!!』
「!!」
耳元でそんな大きな“音”が聞こえた。
思わずよろけ、周囲を見回す。
そんな私に周囲の人間は、奇異の視線を投げかけたりはするものの、自分と同じ様にその“音”を聞いたような様子は無かった。
(ああ、これが『うわん』か)
唐突に「うわん」と声を掛けると言う妖怪。自分はそれに行き当たてしまったのだろう。
ただの耳鳴りだと言うのは簡単だ。だが、これが妖怪の仕業ではないと証明する事は、私には出来ないのだ。
【その二】
小腹が空いた為、私がコンビニへと行った帰りだった。サンダル履きでぺたぺたと歩いて居た私は、その足音が「ぺたぺた」『ぺたぺた』と二重に聞こえて居る事に気が付いた。
誰かが歩いて来たのかと思い後ろを窺うが、特に人影など無い。等間隔で照明が煌々と照っているのだから、闇に紛れている、と言う事も無いだろう。
ふと、『べとべとさん』と言う妖怪の事を思い出し、小声で「べとべとさん、先へお越し」と呟いてみた。
しばらくじっとしていたが、特に何が起こる事も無い。
(まぁ、当たり前か)
そう思って、ふと視線を上げた先の暗闇に、一瞬、白い靄の様な物を見た気がした。気のせいかもしれないし、そうでないかもしれない。
ただ、その後「ぺたぺた」と言う足音が二重に聞こえなくなったのも確かなのだが。
事例としては少なすぎるかもしれないが、これが私が最近行き合ったあやかし話ではある。
これを気のせいだと切って捨てる事は簡単だ。
だが、果たしてこれらは本当に気のせいなのだろうか?