>>887
使用するお題→『たまご』『街角』『ひねもす』

【悲劇の序章】(1/2)

女ガンマン・シンディと、彼女の親友かつ相棒である女サムライ・シグレは今日も広大な荒野の中を旅していた。
サボテンや岩しかない熱い砂漠の中をなんとか突っ切り、大きな街に辿り着いた。

「ふぅ、やっと着いたわね。シグレ、大丈夫?無理させて本当にごめんなさい」
「気にしないでシンディ。そうでもしないとあの砂漠を越えることができずに、干からびて死んでしまうところだったわ」

途中、携帯していた水が底を尽きてしまい、シグレは得意の妖術で冷気を発生させ、シンディとサンセット、そして自分に身を纏わせて凌いできたのだ。
妖術は高度なものだと自らの体力を極限にまで削り、寿命を縮ませてしまうため、命を落としてしまう危険性が高く乱用は禁物だ。
街角にあるレストランに立ち寄り、疲労困憊で今にも倒れそうなシグレのために、シンディはベーコンエッグと冷たいレモネードを御馳走する。

「さあ、レモネードで乾いた喉を潤して、ベーコンエッグを食べて力をつけて!タマゴを食べてきっちり栄養もつけなくちゃね!」
「シンディ、ありがとう」

美味しそうにベーコンエッグを頬張るシグレの姿を、シンディは微笑ましそうに眺めていた。
最初はフォークとナイフの使い方に慣れず四苦八苦していたシグレだが、シンディから丁寧に教えてもらったため、今では上手に扱えるようになっていた。

「あっ、サンセットの食糧も買っておかなくちゃ!ちょっと買い出しに行ってくるから待っててね。なるべく早く戻ってくるから」
「慌てなくてもいいわよ、シンディ」

シンディは近くの市場に向かい、そこでサンセットの大好物であるリンゴやニンジン等の調達をする。

「これくらい買えば大丈夫ね!」

調達を終え、シグレが待っているレストランへと戻る途中だった。
背後からゴン!と鈍器のような物で頭部を思いきり殴られたシンディは、頭から血を流し、意識を失って倒れてしまう。
そのままシンディは荷馬車の中に放り込まれ、どこかに連れ去られていった。

「シンディ、遅いわね。もうそろそろ戻ってきても良い頃なのに」

一向に戻ってこないシンディが心配になり、シグレがテーブルが立ち上がったその時だった。
突然、周りで食事していた全ての客達が彼女に銃を向けてきたのだ。

「な、何!?」
「シンディが心配か?シグレさんよぉ。お前の大好きな女ガンマンはボスに連れて行かれたぜ…」
「シ、シンディをどこへ攫ったの!」
「その答えが出る前にはお前はもう死んでいるがな」
「教える気はさらさらない、ということかしら?それなら話は早いわ」