>>912
使用するお題→『打ち切り』『魚釣り』

【シンディ、私はあなたを応援している】(1/2)

ある夕方、レイチェルはリビングのソファーにもたれて、コーラとポップコーンを手にあるドラマを楽しんでいた。

「シンディ、カッコいいーーーッ!!!」

そう、さすらいの女ガンマン・シンディが無法地帯と化した弱肉強食の西部の世界を旅するドラマだ。
タイトルは「シンディ・ネバー・フェイル(Cindy, Never Fail)」。
西部劇が大好きなレイチェルにとってシンディはまさに憧れの存在であり、必ず録画して何度も見返して楽しむほどだ。

「今日のエピソードも最高ッ!さあ来週はどんな展開かしら!」

しかし、次回予告が流れてこない。突然、「来週から急遽予定を変更して、フィッシングバトルの放送を開始します。どうぞお楽しみに!」の文字が画面に現れた。
そう、男達が熱い魚釣り対決を繰り広げるという番組だ。それを見て、レイチェルは一瞬呆然としてしまう。

「エーーーーーッ!?どういうことなの!?」

レイチェルは急いでテレビ局に電話をかける。

「シンディのドラマ、来週から放送されないって一体どういうことなの!?」
「そのドラマは視聴率の低迷が原因で打ち切りが決定したのです。残念ですが、その決定は覆りません」
「そ、そんな!私、あのドラマの大ファンなの!打ち切りなんてあまりに残酷過ぎるわ!」
「西部劇のドラマは今時もう流行らないんです。申し訳ございません」

プープー…と電話が切れてしまう。レイチェルの体から一気に力が抜け、その場に膝をついて倒れてしまう。

「打ち切り・・・、お願い、夢なら覚めて・・・」

翌日、レイチェルはいつものようにガンマン衣装に身を包んで町中を散歩する。しかし、いつものように元気になれず、目は虚ろとしていた。
公園のベンチに座り、思わずハァと大きく溜息をついて項垂れる。

「人生の楽しみの一つがまさか打ち切りで終わるなんて・・・。私、これからどうすればいいの?」
「レイチェルさん、そんなに落ち込んで一体どうしたんですか?」
「ん?」

その声に頭を上げると、目の前にアニーとペットのイグアナのトニーがいた。

「ア、アニーちゃん、それにトニー。こんにちは、今日も良い天気ね」
「レイチェルさん、元気なさそうだけど何かあったのですか?もし良ければ相談に乗りますよ」
「ありがとう。実はね・・・」

レイチェルは、アニーに大好きなドラマが打ち切りになってしまうことを全て話した。

「なるほど。好きな番組が突然終わるなんて、誰でもショックですよね」
「放送開始から絶対に見逃さないほど大好きなの。シンディがすっごくカッコよくてね、彼女はまさに私の憧れなんだ」
「こうなったらテレビ局に手紙を送ってみたらどうですか?僅かな可能性に賭けるしか方法はないです」
「そうよね!今ならまだ間に合うはず!打ち切りなんてこの私、レイチェルが覆してやる!アニーちゃん、ありがとう!」

そう、シンディのドラマへの熱い想いを書いた手紙を送るのだ。テレビ局に文句を言うのでは逆効果だ。

「とにかく、私のシンディ愛をテレビ局のお偉いさん達にこれでもかってくらい伝えなくちゃ!」