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「おー、ドワイトさん! ちょうどいいところに来てくれた! 聞いてくれよ! このどっからどう見てもポンコツの鼻垂れ小僧が、愛しのステラちゃんを盗っちまったんだ! こんなの、ひでぇよなぁ!?」
 泥酔したパウエルさんは、俺の頭を軽くペシペシと叩く。
「はぁ、まったくお前というやつは……」
 ドワイトさんは呆れたようにツルツルの頭を掻き、こちらに目を向けた。
「少年。うちのパーティの者が申し訳ない。後で厳しく叱り付けておくゆ、え……ッ」
 言葉の途中、彼は何故かギョッと目を見開き、凄まじい速度で『人』の手印を結んだ。
「――傀儡かいらい人術じんじゅつ・贄にえ!」
 刹那せつな、俺の隣にいたはずのパウエルさんは、いつの間にかドワイトさんの隣へ移動。
 その代わり、俺の右横――先ほどまでパウエルさんの立っていた場所には、ボロボロの藁人形が落ちてある。
(これは……予めあらかじめマーキングをした二者の座標を入れ替える術か)
 中々面白い魔術だ。
「お、おいおい……。あの身代わり人形、一体作んのに何か月と掛かんだろ? なんでこんなとこで無駄打ちしてんだ?」
 訝いぶかしがるパウエルさんをよそに、ドワイトさんは深く頭を下げる。
「……うちのパーティの者が、大変な無礼を働いてしまった。パウエルはまだまだ半人前の青二才だが、非常に才能豊かな冒険者。どうかこの場は、儂の顔に免じて見逃してほしい」
「み、『見逃してほしい』って……」
 頭を軽くペシペシとされたぐらいで、そんなに怒っていない。
 俺がなんとも言えない表情で頬を掻いていると――それをどういう風に受け取ったのか、ドワイトさんは顔を青く染めた。



マジでなんで藁人気使ったの?
バジル・ホーキンスもびっくりだよ