「俺は・・・生きている」

その声は勇者だった

「人の姿に戻ることも闇に消えることも出来るぞ」

その声を聴いて暗黒竜は人の姿に戻りさらに闇に溶ける

再び姿を現した時勇者は顔をふせて小刻みに震える

「ふふふ。くくくく。」

忍び笑いが漏れ出す

―我の本当の居場所は闇の世界だったのか。これが笑わずにいられようか

「気分はどうかね。」

「至福でございます」

「実はもう一つプレゼントがあるのじゃ。奥の宝箱を開けよ」

ロスタムが宝物を開けるとそこには闇を凝縮したような鎧があった。

「お主は光の主であることを止めた。替りに闇に生きることになった。その門出の祝いじゃ。審判の日にこの鎧を身に纏って戦うがよい。もちろん鎧を身に纏っても闇に溶けることが出来るぞ」

それを聞くとロスタムは早速闇の鎧を身に纏った。それは禍々しい闇の騎士そのものの姿であった。そして最後に仮面を装着する。その仮面はかつて戦ったインドラが装着していた仮面に似ていた。仮面は己の貌にひたりと付いた。そしてもう一回闇に溶け、再び世に出た。

「ふふふ。くくくく。くくくくくく。」

―勇者はこの時暗黒戦士インドラの気持ちがよくわかった

仮面の下からぐぐもった笑い声が何度も洞窟内に響き渡った。仮面には魔力があるのか声も変わった。その声は洞窟内反響しあい何かの悲鳴にも聞こえた。この声は勇者時代の心の悲鳴か?