アルのこの変化はなんでなんだぜ?

■ 都市庁舎スバル演説前(第五章40 『憤怒の浸食』)

「オレぁ、姫さんの……プリシラのために行動する。だから他の奴らのことは、ぶっちゃけたこと言えば興味もねぇ。こうやって兄弟たちと行動してんのも、オレ自身の生存率と姫さんと遭遇できる可能性を高めるための打算さ」

「聖人か、英雄にでもなったつもりかよ。だとしたら似合わねぇにも程があるぜ」

「違う違う、全然違う。オレはな、自己満足を通すのが悪いって言ってんじゃねぇ。自己満足の限度が、そろそろ見えてきただろって話をしてんだ。誰もかれもを助けようって兄弟の考えは、この避難所の惨状を見て否定されただろ? それならもう、いいじゃねぇか。素直に、大事なものだけ守ってとんずらこいても」
「とんずらって……逃げるって言うのか? この状況で?」
「何か間違ってるか? 手に負えないもんを前に、逃げるって選択の何がおかしい。オレさ姫さんを回収して、都市からは逃げを打たせてもらう。ここの人間のために命を懸ける義理も、そうする理由もねぇ」

■ 都市庁舎スバル演説直後(第五章44 『腹を割って話そう』)

「――悪ぃんだが、オレぁここで抜けさせてもらうわ」
「ま、待てって! 抜けるって、どういうことだよ? 今は一人でも戦力が欲しいときだってのに、お前を手放すわけねぇだろ、馬鹿か」
「馬鹿でもなんでも構わねぇが、オレを戦力の当てにするなんざそれこそ馬鹿だぜ。どっかそのへんの避難所で、戦い慣れしてる奴を連れてきた方がオレや猫の手を借りるより役に立つってもんだ。だから、オレぁいいだろ」

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■ 7章(第七章31 『同郷の語らい』、第七章33 『いざ、魔都への旅路へ』)

「プリステラで兄弟がやった演説、覚えてるよな」
「あのとき、オレは言ったはずだぜ。あそこで放送するってことは、兄弟は『英雄幻想』を背負ってくことになるんだってな」
「折れんなよ、兄弟。かましてやれよ、兄弟。――期待に応えろよ、兄弟」
「オレは忘れちゃいねぇ。そして、悪ぃが今さら逃がさねぇよ、兄弟」
「英雄に、なってもらうぜ、兄弟。――いいや、ナツキ・スバル」

「姫さん、ちょいと手綱を離れていいか? 兄弟についててやりたくてよ」
「なんでも何も言ったじゃねぇか。兄弟に協力するってな。オレみたいなうらぶれたオッサンでも、どっかしらで役立つと思うぜ」