中村:対して、「なろう」はコミケと同じで素人の創作物が口コミで話題になって、出版社がスカウトするシステムでしょ。私はこれこそが新人発掘の理想だと思ったの。新人賞で審査員に見出されず、埋もれていた才能が正当に評価されるチャンスじゃないか、と期待していました。ところが蓋を開けてみたら、新人が周りの評価ばかり気にしてテンプレみたいな小説しか書かなくなってしまいました。とても残念です。

――イラストレーター志望者も“いいね”が欲しいあまり、流行りの絵柄に似せて描く新人が多いです。ネット社会の弊害といえるかもしれませんね。中村先生が作家志望の若手にアドバイスするとしたら、どんな言葉をかけたいですか。

中村:こんなババアに小言を言われたくないかもしれないけれど、素人のうちから売れることを考えて書いちゃダメです。周りの評価を気にするなんてもってのほか。自分にしか書けないものを書かなきゃ。その中から将来のヒット作が生まれるんですよ。素人は自由に書けるのが特権なんだから、思う存分、好きな小説を書いてほしいと思いますね。