気付けば持ってる文庫は新潮文庫ばかり 2冊目
表紙のブドウには葉っぱがなく、
本扉のブドウには葉っぱがあるのです。
「何でそんなことを‥‥」
と思われるでしょうが、
もちろんこれには理由があります。
表紙にある方が正式なシンボルマークなのですが、
このブドウの蔓、
何かの文字に見えませんか?
これは、ローマ字の「S」と「L」を
かたどっているのです。
「Shincho Library」、
つまり新潮文庫の頭文字ですね。
このマークを新潮社内では、
「SLマーク」(エスエルマーク)
と呼んでいます。
では、本扉の方のブドウはと言うと、
SLマークが、
ブドウとしては葉のない不完全な形なので、
葉っぱのある普通のブドウを
一緒にセットでデザインしたものなのです。
光と影、表と裏、
そんな関係です。 この二つのマークが登場したのは、
戦後まもない1950年でした。
戦前から資生堂などの
広告制作で活躍していた
当時の商業美術界の第一人者、
山名文夫さん(やまな・あやお1897〜1980)が
デザインしたものです。
さすがに遊び心がたっぷりですね。
さて、このブドウのマークですが、
じつは、さらに、
もう一つのバリエーションがあります!
そして、
このマークがついた文庫本は
ごく限られているのです。
もしも本屋さんでヒマを潰すような機会があれば、
カバー全体がクリーム色の文庫を探してみて下さい。
(『魔の山』『武者小路実篤詩集』『ナナ』『海潮音』など)