中村うさぎは「何かを模倣」して「誰かに嫉妬」して「誰かのように」なりたかった作家。

初期は破天荒ラノベを模倣して、水野良の爆売れに嫉妬して、王領寺静(藤本ひとみ)のようにラノベ作家から文壇作家へと脱出したかった。
中期は女無頼作家を模倣して、西原と志麻子の人気に嫉妬して、林真理子のように遊んで稼げる地位のエッセイストになりたかった。
晩期はフェミとトラウマ告白本を模倣して、本物のトラウマを持つ被害者に嫉妬して、寂聴のように達観した視座で尊敬される作家になりたかった。

中村うさぎの作家人生を分析すると以上のような作家経歴と言えるだろうか。

〇〇っぽい作文なら描ける程度の模倣力。
実力を持った同輩には逆恨みのような嫉妬。
その分野の頂点である有名人に自分もなれると安易で傲慢な勘違い。

考えてみると『狂人失格』こそがまさに中村うさぎの代表作と言える。
自己顕示欲の高さに自ら苦しんでいる女が「作家」という社会的地位の箔に目が眩み、何も努力を積み上げてこなかった末に「作家のなりそこない」という雑文書きと成り果て。
齢50を過ぎて初めて己のその空虚な遍歴を自覚し、慄き、恥じ入ってもなお「狂人」という他者に語らせるという見苦しい虚飾で、周囲も自分も騙し覆い隠そうとする女の哀しい告白本。
この本こそが「中村うさぎ」のオリジナリティを真に持ちうる作品である。