暗めのショートショートを書く人のスレ
暗いSSを書いている人はここに作品を直接載せるか、
もしくはどこかのサイトに投稿してアドレスを張ってください
お互いに創作談義してもオーケー。
明るい話を書くよりもそういうほうが好きだという人は是非参加していただけるとありがたいです。 「ええ、最近知ったんですけどね。この近くに心霊スポットがあるらしくって」
そう話すのはタクシー運転手の万城目さん(仮名)
これは彼が体験した実話である。
「昨年の夏、たしか深夜二時頃でした。あるお客さんを降ろしたあと
女性を拾ったんですよ、いやー危なかった。
それがね、暗がりで道の真ん中で白いドレスを着て、突っ立ってるもんだから
もうちょっとでひいてしまうところだったんです…」
「どこまでですか?」
「……」
「今日も暑いですねぇ」
「……」
返事がない…何度か話しかけるが、後部座席に乗った女性は無言のままだった。
「お客さん、どこへ行けばいいか言ってもらわないと困るんですけど」
しばらくして運転手は気がついた。心霊スポットとして有名な場所の近くだということに。 2)
すると、長い黒髪を顔に垂らした影の薄い女性客が一言
「いってください」
「へ?どこへ」
「いってください」
「へ?」
こんなやり取りをしているうちにタクシー運転手の万城目さんは困り切った表情で
後部座席を振り返ってみた。すると…
見ると、その女性客は雨も降っていないのに
何やらびっしょりと濡れたような長い黒髪が顔に覆いかぶさって
その黒髪のすき間から血の気の引いた真っ白な顔をうつむきかげんに
何かを訴えようとしている。 3)
「お客さん、あんたね、今日手首切りなさったでしょ?」
「……」
「ホラ、その手首。言わなくてもわかってますよ。
こういう商売してるとね。たまにいるんでね。あんたのような客が…
さあ降りとくれ。こっちは忙しいんだ。たくさんの客が今夜も待ってるんでね」
そう言って万城目さんは車から降りて後部座席から女性客を強引に降ろしたという。
女性がか細い声で
「わたしは……まだ死んでなんかいません……死にきれなかったんです……」
すると運転席に乗り込んだ万城目さんは
「だから駄目なんですよ、この車はあの世に運ぶタクシーなんでね」
そう言うと女性の前で万城目さんはタクシーごと、スッと消えた。(了)