突如現れた人物、それはクアイサの叔父だった。
「クアイサ、今すぐ通帳と印鑑を持ってこの町を出るんだ」
「どうして?」
「ラフテルはもう危険だ。恐らく、近い内に大勢のガバンがラフテルにやってくる。そう
なればこの町の治安を維持するのは難しくなる。だからだ」
「…………」
 突然のとんでもない話。クアイサは絶望するしかなかった。
「いいかクアイサ? 通帳と印鑑を持ったらすぐに駅に向かえ。そしたら電車に乗って
モーフィルに向かうんだ。そこで一週間俺からの連絡を待っててほしい。万が一、俺から
連絡が来なかった場合……」
「ああ……でも叔父さん……」
「なんだ?」
「携帯使えないみたいなんだ……」
「なに? 壊れたのか?」
「全然呼び出さなくて……」
「ならモーフィルで修理するか交換してもらえ。それだけの金は入ってる」
「……わかった」
「とにかく、モーフィルに着いたら、一週間俺からの連絡を待つんだ。万が一、連絡が来
なかったり連絡がつかなかったりしたら、その時は、遠すぎるかもしれないが、イルカロ
スにいる俺の友人を訪ねろ。事情を話せばきっと助けてくれるはずだ」
 そう言って叔父は、ポケットからメモ帳を取り出した。そしてメモ帳から一ページを破
り取ると、その一ページをクアイサに差し出した。