戸が開くと絵のなかから女が出てきた。入ってきたのではなく、出てきたのである。いずれも素性は知らぬ。ならば、戸の外の街並みがかしこを切りとった絵でもよしとせねばならぬ。
女と連れ立って吹き入った春の風をいっそ塗りでもしようか。何色で?そこでいくらか互いが知れよう。
もっとも、待ち人は女ではない。だから、問えぬ。先に酒を酌み交わすわけにもいかぬ。やはり、外は景色が変わってしまったか。待ち人は迷ってしまったか。
「あ、あの、大王さんと苺さんですか?違っていたらごめんなさい。わたし、このお店で待ち合わせをしているので」
慣れない名で呼ばれた二人は、塗ったつもりでいた風に捲かれてしまった。判別のつかぬ返事をこうべをめぐらせなおも描こうとする。
「あ、あの、わたし、ビタミンCです」
女も慣れない名に薄いまぶたを赤くする。それとも、初見のつつましい礼儀か。唇もおなじくうっすら赤い。
「え?ビタミンC?いや、ビタミンCさん?おまんこ発言の?」
おそらく、そう言ったのが大王だ。女は男をみつめると、かっと朱になった。
「はい、、、」

チェーホフ 中二階のある家
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