酷評お願いします

「いらっしゃいませー」
先生は、入ってすぐの隅っこ、外からガラス張りで見える位置に、迷わず腰を下ろした。二人が顔を突き合わせたらぶつかってしまいそうな、狭いテーブルだ。先生はソファに荷物を置き、二人分のコーヒーを注文する。そして、自信満々といった表情でいう。
「私、今日は秘密兵器を用意してきたの。あのね……」
「僕、コーヒー飲めないんですけど」
「はあ、お子様かお前!」
話の腰を折ってしまったのはまずかったが、コーヒーは飲んだ事がない。変な所で大人扱いされても困る。
仕方ないので、僕も付き合いで飲む事にした。先生は冷たい目をしている。やめてほしい、その目で見るのは。
「全く、しょうがないわね。今日は君の為にー、こんなものを用意してきたのよ。ほら。一円玉と五円玉。これで鶴亀算を解くわよ。このテキストのA−2の問題。いいかしら?」
先生はそういって、テキストを開く。一円玉と五円玉の問題だ。
「まずは問題はいいから、これを見て。全部で四枚の時、何通りの数が作れる?」
「え、ええと……」
「ええとね、全部一円玉だと、金額はいくら?」
「四円です」
「じゃあ、一枚五円玉に交換するわね。いくらになる?」
「え、ええと……八円です」
「二枚交換すると?」
 そういいながら、先生は机の上の一円玉を五円玉に交換する。
「十二円です」
「そうでしょう。三枚交換すると?」
先生は、丁寧に教えてくれた。四円から二十円まで、四通りの数が作れる。
その四つの数の差は、四になっている。その四が、一と五の差になっているのだ。
「十六円を作りたかったら、三枚交換すればいいのよね。そうすると、四円が十二円増えて、十六円になるのよ。解るかしら?」
「わ、解ります」
「解ったでしょ?じゃあ問題ね。全部で二十枚。合計金額は、八十円。どうかしら?」