観覧車2017から引用


 「結婚式を挙げよう」
 「えっ?」
 「学生のうちに、思い出にさ」
 「そんなこと言ったって、結婚式場でなんてお金無いじゃないの」
 「いや、お金無くても素敵な結婚式は出来る。YOUTUBEで甲斐バンドの曲聞いたらこれだ、と思ったわけで」
 「ふーん」
 「ニャオンに観覧車があるだろうって、俺とお前が最初に目が合ったのは、みんなで面白半分に観覧車に乗ったときじゃないか」
 「そうだけど、でどうするの?」

 二人は千葉県野田市の東京理経大の4年生。男性の名を高奈義明、女性の名を遠島ゆかりと言った。
二人は1年生の時、野田キャンパスの文学研究会で出会い、彼女の方で多少ブレはあったものの、
2年前から半同棲の状態になり、親の公認により、同棲状態になった。
 義明の愛宕のアパートにサークル活動が終わったら、二人で帰り、二人で晩飯を食べ、セックスをし、
次の日も登校と、隙のない生活を送っていた。
義明は就職はつくば市のNASDAに決まり、ゆかりは秋葉原のIT企業の開発の就職は決まっていた。
学生のうちはお金は無く、婚約指輪も購入していないが、二人には4年間の信頼があった。