れつだん先生 恋する閉鎖病棟から引用

 膝までの深さがある沼をずっと歩き続けていた。いや、歩いているつもりになっていた。
気がつけばずぶずぶと、肩のあたりまで沈み込んでいた。けれど、僕はそれでも歩くのをやめなかったし、
もうすぐにでも向こう岸に辿りつけると思っていた。そんな僕に主治医ははっきりと、「入院したほうがいいね」と言った。
僕は静かに頷いた。そこでようやく僕は歩くのをやめた。