新作は確かにひどい出来でした!皆さんの気持ちもわかる!でもこれはどうですか!これも新作!

 いくら四月も半ばを過ぎようとしていても、早朝、かすかに残る寒さのせいで毛布から抜け出せないでいた。
けたたましい音が鳴る目覚まし時計を毛布から伸ばした右手で止め、そのままごそごそと動かして煙草を手にする。首から上だけを毛布から出し、煙草を咥えて火をつける。
目覚まし時計の針は七時を指している。気合を入れ毛布を体から剥ぎ取り、咥え煙草のままユニットバスへ向かい、放尿を済ませる。手を洗いユニットバスから出、部屋へ戻る。
五畳の部屋はパソコン、テレビ、ゲーム機、本棚が溢れている。部屋の片隅に乱雑に置かれている、何度洗っても汚れが取れない青い作業着を取り、スウェットを脱いで着替える。
また今日も残業だろうな、と思うと、気が滅入って大きなため息が漏れた。
 五畳五万六千円、ユニットバスのアパートから自転車を走らせること十分のところに工場はあった。従業員二十人程度の零細企業だ。
そこで僕は機械オペレーターの仕事をしている。働きだしたのは二十五歳の頃だから、もう勤めだして五年になる。従業員は全員僕の先輩で、後輩は一人もいない。
新しく従業員を雇い入れることをしないのだ。門を抜け工場内へ入り、右に進むと自転車置き場がある。そこに止め、目の前にある階段を上ると事務所がある。
ドアを開けると既に事務の中年女性二人が事務椅子に座って世間話をしている。
僕は挨拶を済ませるとドアの横にあるタイムカードを機械に通し、階段を下りた。階段の下に小さな喫煙所がある。ドアを開けると田中さんが丸椅子に座っり、スポーツ新聞を読みながら煙草を吸っていた。僕は挨拶をした。