酷評して

雲に覆われた星一つ見えない空を眺めながら、祈るように彼女からの返事を智史は待っている。待っている間、いろいろとよけいなことを考える。
陽子に送ったLINEのメッセージには「日曜日に月見の里の万灯祭に行きませんか?」という文言を紛れ込ませていた。はっきりと誘わず、暈し気味に誘ったのはよくなかった。
陽子にしてみれば、LINEで、しかもはっきりとしない誘いが如何にも消極的に映ったのかもしれない。くよくよして、そのようなことを智史は考えていた。
その日は、とうとう返信がこなかった。胸に蟠りを抱えたまま、夜は更けていく。
明くる日。七月十五日の朝早く、智史は愛犬を連れて外に出た。田畑に囲まれた農道を真っ直ぐに歩いて一キロばかり先に林があり、その林を越えると国道があり、その先に「青空保育園」という名称の保育園の狭いグランドに出る。
そこでいつものように犬のリードを外してやり、野っ原に放してやる。
空には雲ひとつなく、蒼穹のライトブルーに交じって半円の薄い有明の月が西の方角にぽつんと浮かんでいる。
その透き通った月をみながら、智史はまた陽子のことを考えて、スマホの画面に目を落とす。するとLINEに二件のメッセージが入っていることがわかった。一件は陽子からだった。
もう一件は、同僚の須藤から。智史は、すぐに陽子からのメッセージを開かずに、須藤からきたものを開いた。
須藤からのメッセージには「万灯祭の話、陽子さんから聞いた?」と一言記してあるだけだった。
智史は、何のことだがわからずに混乱したが、恐らく陽子のメッセージを見ればわかるだろうと直感が働いて、陽子からのLINEを開くと案の定「万灯祭、みんなで行きましょう」というメッセージだった。