訂正

脳みそがその芯をさすりあげられるように目が覚めた。
とてもいやな夢をみていたような気がする。汗でべとつく首回りをぬぐった。去っていく人の背中かまぶたに焼き付いている。けれどそれが誰なのか、僕には思い出せない。
真夜中だといのに、機内のあちこちでささやき声が聞こえてきていた。まだぼんやりする頭を振って、僕は背もたれから上体を起こした。

『潮時』一木けい 小説新潮5月号掲載