>>817
優等生的ではないが、「ジニのパズル」みたいな
世界文学のミニチュアって感じの作品。
どの人間関係も表層的で、中途半端にしか描いていないのに、
マジックリアリズムや宗教的な表現をもちいたりすることで、
なにかありそうという雰囲気をつくり、それ一辺倒って感じ。
この雰囲気に、選考委員はころりと騙された。
ちゃんと読めば、生々しさも、人間臭さもない作品。
あまり多くはないインドにかんする情報(年齢詐称、名誉殺人など)
だけはおもしろかったが、これは別にフィクションの力ではない。
受賞にまったく値しないとは思わないが、選考委員のほとんどが
絶賛するほどの作品ではないと思う。これならまだ「二人組」のほうが
よかった。発達障害の女子との微妙な人間関係を丁寧に描いていたし、
日本という国が抱える問題に触れてもいた。
人間をちゃんと描けないから、世界文学のエッセンスでごまかす。
最近そんな作品がほんと増えてきた。変化することは大切だが、中身が薄くて……。