俺は608だが椿さんの自演と思われてはあんまりなので、別人の証明になるかはわからないが某作品のスピンオフを載せよう。
たぶんはっきり別人とわかるはずだ。

「首なし武者の謎」

「首なしの武者の幽霊が出るんだって」
 小夜《さよ》ちゃんがそんなことを言い出したのは、学校からの帰り道でのことである。
「なーにそれ?」
 あたしは別に怪談話なんかに興味はなかったが、大親友の言うことは聞かざるを得ないのだ。
 夕方までにはちょっと時間がある住宅街だった。あたしたちは家が近所で、下校時には一緒になることが多かった。遠くから今年初めてのセミの鳴き声が聞こえてくる。一番セミだ。
「この間、大きなショッピングモールが出来たでしょう? あそこに出るんだって、夜中の二時ごろ」
 近ごろ町外れに建った巨大な箱型の、いろんなお店が入る商業施設だ。でっかい駐車場もある。一度パパママと一緒に行った。
「誰に聞いたの?」
「んーと、あれ? 誰だったかなぁ?」
 小夜ちゃんは小首をかしげ、その拍子に丸メガネがきらりと光った。噂の出どころがわからなくなるのはなにも怪談に限ったことじゃない。むしろ、出どころがわからないからこそ噂であり、怪談なのだ! と、どうでもいいことをあたしは思った。
「深夜二時に誰が見たの?」
 小夜ちゃんとあたしは県立|印須磨栖《いんすます》高校に通うぴちぴちの女子高生だ。深夜に出歩くような真似をする友人はいない――かな?
「先輩の友達の知り合いって言ってたかな?」
「めっちゃ又聞きだねぇ」
「でもでも、他にも何人かから聞いたよ」
 〝でもでも〟は、小夜ちゃんの口癖だ。かわいい。
「幽霊なんて――」
「あそこって前、なにがあったか覚えてる?」
 いるわけないよ、と続けようとしたあたしを遮って小夜ちゃんが言った。
「んー、なにもなかったんじゃない?」
 なにもないってことはないだろうが思い出せない。
「それがどうしたの?」
「今までそんな噂なかったじゃない? 首なし幽霊が出るようになったのは、前あったなにかを壊しちゃったとか――」
「あ、幽霊、信じてるんだ」
 あたしは思わず笑ってしまった。
「いや、幽霊はいるし」
 小夜ちゃんが真顔で言った。
「いるわけないよ!」
「いやいや、いるし!」