3年B組添削先生


「おまいらの成績だと、高校なんて行けないぞ」
 放課後のホームルームで、そう添削先生が言うと、教室はざわめきだった。
「だって、添削先生。進路希望に朱ばかり入れるし」
「俺は、先生の知り合いのところに丁稚に行けと言われた」
「お前はひきこもりのままでいいって言われた」
 教室は避難の声であふれた。
 クラスで一番頭のいい女子が言い放った。
 この子は塾に通い、塾の模試では進学校のA判定が出ていたから、添削先生の指導を無視していた。
「先生、そこまでおっしゃるなら、先生の履歴書をクラス全員に見せていただけないでしょうか?」
「ああ、いいぞ。ただし、明日の朝だぞ」

 翌日の朝が来た。
 なぜか、校長と教頭が現れた。
「すまん、添削先生は偽教員だった」
 教室はざわめかなかった。
 まぁ、当然だろうと。
「添削先生、いや添削氏の調査をしていて今朝、わかった」
 例の女子がすーと立った。
「校長先生、それで私たちの進路は?」
 校長先生はドアの方を向いた。
 男が入ってきた。
「設定です。今日から担任になります」
 生徒たちはがっかりした様子になった。
 この人は添削先生と同じ種類の教師と一目で見抜いた。
 まぁ、人生にギャップイヤーがあるのもしかたがないとあきらめたようだった。