添削の新作

「あーあ、風俗にいってもブスしかいないし、空しい一方だよなあ。悲しくなってくる」
「はっはっはっはっは。私を呼んだのはお前か」
 頭が完全にハゲ尽くした胡散臭いおっさんが矢庭に現れて、俺の進路を妨害した。
「何だお前」
「何だ、じゃない。神様である。年寄りをもっと敬いなさい」
「神様なのに年寄り? 何だそれ」
「神も歳を取るのだ。メフィストーフェレスは私の親戚であるぞよ」
「何だそれ。誰だよ」
「おお! 何たることよ! メフィーストフェレースーも知らんとは、お主それでも人の子
か?」
「人の子だが何だ? お前が神なんだったら、証拠を見せろ」
「よし。お主は今からハゲる」
「はあ?」
「ほら、毛が抜けていくぞ。ほらほらほら!」
 俺の目の前に、毛の束が落ちてきた。物理法則に反した動きで毛が前方に浮遊して、それが
ゆっくりと自然落下したようだ。アスファルトの路面に落ちる。
 今は夜だが、不思議な光に照らされてはっきり見えた。
「ほーら、どんどんハゲるぞー」
 ど、どうしたらいいんだ!
「はっはっは、私は実は悪魔だったのさ。メフィスト―フェレース―が悪魔であることは、
『ファウスト』を読んでいれば誰でも知っている。お主、愚かであるの」
「ハゲたくねえよ! どうしたらいいんだ!」
「そこの東大出の官僚が数学の問題を解き終えた時、ハゲは止まるであろう」
 俺の右横にスーツを着た官僚がいた。いつの間に現れたのかは判らない。

「うーんとですね、タンジェント一度が有理数かどうかですね。いやー、問題の意味がよく判
りませんねー。私数学は得意じゃないものですから。まず背理法を使い、有理数であるとした
上でそれが成り立たないことを示し、無理数であると証明しましょうか。倍角の公式により、
タンジェントαが有理数ならタンジェント2αも有理数です。これに気づけば殆ど解けたも同
然ですかね。