「これと同様に、凡てのフィクション推理小説は現実を描いたものかも知れない。
フィクションとノンフィクションの垣根が崩壊する。
山野部森蔵がいくら現実に推理小説を描き出したところで、それは彼の作品に限定された話でしかなかった。
しかし最後の最後で彼が企んだこととは、古今東西、ありとあらゆる推理小説を〈夜の夢〉から〈うつし世〉へと引き上げることだったのだ。
あ・ま・ね・く・推・理・小・説・を・現・実・化・す・る・大・ト・リ・ッ・ク・――
それこそが彼の最後の大仕事であり、その為にこそ、彼と彼らのこれまでの活動があったのだ」
 大いなる真実が告げられて、斯くして真〈解決編〉は締め括られた。



新潮ミステリー大賞受賞作「探偵・渦目摩訶子は明鏡止水」凛野冥