その3

コンクリートの壁面は四方に巡らされ、箱の様な体をなしていた。六畳程の広さだろうか、何かが置かれているわけでもない、ただコンクリート製の空間であることだけを主張している。
「どおりで話題が立ち消えたわけだ」
 男の呟きがこの無機質な空間に反響する。SNSで話題になったわりにはその後の話を聞かない、その違和感に引っかかっていた。防空壕と呼ぶには新し過ぎる。かといって原始人やらオカルト的な何かを期待するには凡庸過ぎる、それがこの「横山」の正体なのだ。
「世の中、都市伝説やら心霊現象やらいってるけど、実際に確かめてみれば結局はこんなもんなんだよな」
 当てつけのように大袈裟な独り言を吐いたあと、男は踵を返し、来た道を戻り始めた。