日テレもフジテレビも、「忠臣蔵」のドラマを作れなくなった「根本的な理由」

忠臣蔵の映画やドラマが長いこと作られてきた背景として、作り手側にも大きな事情がありました。
「忠臣蔵」は大きな見せ場だけで六つあります。それぞれ屋内が主な舞台になるため、セットを作る必要があります。
「松の廊下」であれば、かなり長い廊下で襖に大きな松が描かれている。「大評定」の広間は赤穂藩の藩士全員が入る広いスペースになります。
それから、祇園で大石が遊ぶ遊郭に「東下り」の宿に瑤泉院の屋敷。
さらに討ち入りで使う吉良邸のセットも、大がかりなアクションを撮るだけの規模が必要になる。
どの見せ場も、セットにかなりお金がかかるわけです。
しかも、それぞれが、その一回の見せ場のためにしか使われません。
つまり、1シーンだけのために大がかりなセットを作らなければならない。そのセットがいくつもある。
それだけたくさんお金が必要だし、それを作れるだけのスタッフの技術力も必要になる。
そして何より、忠臣蔵はオールスターが前提になります。そうなるとキャストを集める資金力も政治力も必要。
つまり、「忠臣蔵」を作るというのはかなりの大プロジェクトなのです。
「忠臣蔵」を作るということは、「自分たちは忠臣蔵を作れる力があるんだ」という誇示でもあるわけです。
そのため、映画会社やテレビ局の何周年記念作品だとか、あるいは、すごく会社の調子が良いときの特別な作品として作られてきました。

逆に言うと、いま作れなくなっている大きな理由もそれなわけです。
映画会社もテレビ局も金がないし、キャスティングの力もないんですよ。