【受賞作】
「無敵の犬の夜」(400字×151枚)
小泉綾子(こいずみ・あやこ)/東京都生まれ、在住。38歳。2022年「あの子なら死んだよ」が第8回林芙美子文学賞佳作。

・作品紹介
「この先俺は、きっと何もなれんと思う。夢の見方を知らんけん」
北九州の片田舎。幼少期に右手の小指と薬指の半分を失った中学生の界(かい)は、地元の不良グループで知り合った「バリイケとる」男・橘さんに心酔するようになる。東京でトラブルを起こした橘さんのため、夜行バスに乗り込みひとり東京に向かうが――。

**************
【優秀作】
「解答者は走ってください」(400字×143枚)
佐佐木陸(ささき・りく)/1990年、埼玉県出身、都内在住。33歳。

・作品紹介
「じゃあぼくは、誰の子供なんだ? ぼくを書いているこのひとは、いったい誰なんだ?」
「パパ上」と二人で暮らしているはずの怜王鳴門(れおなるど)。誰かが書いた自分の過去についての物語を読み始め、喪失していた自分と世界の歴史を知ることになる。クイズに耽溺した日々と、クイズチームで共に無双したはずの「サッちゃん」と「パパ」は一体どこへ――?

【優秀作】
「おわりのそこみえ」(400字×242枚)
図野象(ずの・しょう)/1988年、大阪府生まれ、在住。35歳。

・作品紹介
「あのさ、その「死にたい」もファッションみたいなものでしょ?」
買い物依存と性依存を抱え、自堕落な生活を続ける美帆と、貧乏で不仲の両親、ストーカーの宇津木、お金持ちの友人・加代子、ベトナム料理屋のナムちゃん、アプリで知り合ったバンドマンのアメ。ある1人の死をきっかけに、破滅への道を一心に転がる美帆だが……。「終わりの底」で目にした予想外の景色とは?